創業融資

創業計画書の書き方!日本政策金融公庫の創業融資を受けるためのコツ

どんな分野でも、新しく事業を立ち上げるには多くの資金が必要になるものです。その資金を日本政策金融公庫の創業融資から調達したいと考えている事業者も少なくないでしょう。日本政策金融公庫の融資を受けるには、創業計画書を作成する必要があります。ここでは創業計画書とは何か、事業計画書とはどう違うのか、どのように書けば審査に通りやすくなるのかという点を解説します。

はじめに|創業計画書とは

創業計画書とは、日本政策金融公庫(以下、「公庫」)が提供しているすべての創業融資の申し込みで必要となる計画書です。どのような事業を行い、その際に必要となる資金や資金を借りた場合の具体的な返済の目途がどれほどあるのかを示すものであり、言い換えるならば、お金を返すことができる根拠を伝える書類です。開業したばかりであると、過去の実績がなく、利益を出せるかどうかが分からないので、業種経験の豊富さや熱意・やる気を伝えるためにわかりやすい、説得力のある計画書を作りましょう。

創業融資を利用するためには、創業計画書はもちろん重要です。
ただし、完璧な創業計画書があったとしても創業融資を受けられない可能性があります。
日本政策金融公庫の新創業融資制度を「確実に受けたい!」とお考えでしたら、以下をチェックしてみてくださいね。

日本政策金融公庫の新創業融資制度を利用するための5つの審査基準

創業計画書のテンプレート

まずは公庫のホームページよりテンプレートをダウンロードしましょう。
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html

パソコンで作成される方はExcelを、手書きで作成される方はPDFをダウンロードしましょう。

創業計画書以外に必要な書類

また、公庫の創業融資を受けるためには、創業計画書と合わせて主に5つの書類の提出が必要です。創業計画書のテンプレートをダウンロードするページ内に他の5つの必要書類のテンプレートがありますので一緒にダウンロードしてしまいましょう。
https://www.jfc.go.jp/n/service/dl_kokumin.html

1.借入申込書

氏名・生年月日・住所などの基本的な個人情報や、借入の希望額などを書きます。「申込書」という名前通り、あくまで最低限の情報だけを書くものです。

2.月別収支計画書

月別収支計画書は公庫の公式サイトで「創業計画書において、月別の詳細な収支計画を策定する場合にご記入いただくもの」と書かれています。つまり、提出が必須というわけではありませんが、公庫がわざわざフォーマットまで用意している以上、提出するほうが審査で有利になるといえるでしょう。

3.企業概要書

企業概要書は公庫との取引が初めての場合に必要なもので、自社の取扱商品やサービス、企業の沿革や代表者の略歴などを書きます。起業経験がなく、まだ事業の実績がない場合は、代表者の略歴だけを書くことになります。

4.設備投資計画書

設備投資の計画は創業計画書の中にも記入欄がありますが、それをさらに詳細に説明します。設備投資がない場合は初期投資の詳細をまとめましょう。これはただの計画ではなく、工事業者などの見積書を添付し、現実的な支払いの計画を示します。創業融資で借り入れる金額は設備投資に使われることが多いため、この書類は特に重要なものです。

5.資金繰り表

資金繰り表には創業後の月別の収支と借入の返済も含めたすべての収支をまとめます。上に書いた「月別収支計画書」との違いは、返済計画についても書く点です。月別収支計画書よりも、資金繰り表のほうが詳細な内容といえます。返済計画は、公庫からの借入金と他の金融機関などからの借入金、それぞれについて記入するものです。

これら5つの書類に加え、自身で必要と判断した書類は何でも自由に添付できます。ただし、公庫の審査担当者にすべての書類をチェックする義務はありません。創業計画書1枚でも事業の可能性が伝わるように、内容を練り込んで作成しましょう。

創業計画書の印刷サイズ

一般にはA3とされています。サイズは指定されていませんが、A4ではすべての記入欄が小さくなり、書き込める情報が少なくなるためです。多くの事業者がA3で提出する中でA4の創業計画書を提出すると「事業に対する熱意が乏しい」と見なされる可能性もあります。
このため、創業計画書はA3で印刷して提出するようにしましょう。A3での印刷はコンビニのコピー機でできます。PDFをクラウドに送ってパスワードをコピー機で入力するか、USBフラッシュメモリなどに入れて持参しましょう。A4で印刷したあと拡大コピーをするのは、画質が悪くなるので避けるべきです。

 
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事業計画書と創業計画書の違い

創業計画書と事業計画書の違いは、簡単にいうと以下のようになります。

・創業計画書…「開業時」に提出
・事業計画書…「開業後」に提出

開業時の融資の申し込みには創業計画書を使い、開業後の事業拡大などの資金調達には事業計画書を使うということです。

5つの大きな違い

創業計画書と事業計画書の大まかな違いは上記の通りですが、具体的には以下の5つが特に大きく異なっています。

1.事業経験の重要性
2.自己資金の重要性
3.事業部門ごとの明細の必要性
4.過去の財務諸表の内容
5.第三者機関の記入の必要性

1.事業経験の重要性

創業計画書でも、実は事業経験が影響します。「経営者の略歴等」という欄に「過去の事業経験」という項目があるためです。しかし、あくまで項目があるというだけで、創業融資の審査ではそれほど重視されません。創業計画書での事業経験はあくまで参考程度の情報です。一方、事業計画書ではこれまでの事業の実績がきわめて重要になります。現実に事業が始まっている以上、その実績ほど経営者の能力や可能性を物語るものはないためです。
事業の経験ではなく「その分野での業務経験」ということなら、逆に創業計画書のほうが重要になります。事業の実績がない以上、会社員時代などの業務経験をアピールするしかないためです。事業計画書でも代表者の略歴の記入欄はありますが、創業計画書に比べるとこれはあまり重視されません。学歴や過去の勤務先より「現実に手がけている事業の実績のほうが大事」ということです。

2.自己資金の重要性

自己資金については創業計画書のほうが重要になります。自己資金とは、立ち上げた会社の資本金や個人の預貯金などです。事業計画書でもこれらの資金は重要ですが、創業計画書では特に重要になります。
理由は「個人の借金の穴埋めに使おうとしているわけではない」ということを伝える必要があるためです。残念ながら、創業融資をこのような目的で受けようとする経営者は少なくありません。審査担当者もこの点は特に警戒しているため、「そのような目的で借りようとしているわけではない」と、証明する必要があるのです。
創業計画書での自己資金を書く欄は「必要な資金と調達方法」という部分です。ここの自己資金の項目に○○万円という金額のみを記入します。また、証明書類を添付しましょう。
添付する証明書類については、個人の預貯金の残高は、通帳のコピーを提出しましょう。会社の資本金についても、登記簿謄本だけではなく残高証明書を提出しましょう。会社の資本金は設立時に銀行口座に入金していれば、あとは自由に引き出せるためです。このため、登記簿謄本の資本金額だけでは信用されません。

※自己資金についての詳しい記事はこちらをチェック!
あなたの自己資金は大丈夫?創業融資を受ける前に自己資金の定義を確認しておこう!
日本政策金融公庫融資に必要な自己資金はいくら?

3.事業部門ごとの明細の必要性

事業部門ごとの明細は、事業計画書では必須となります。理由は、事業がすでにスタートしているためです。スタートした事業については、全部門の収支を把握していなければなりません。金融機関や投資家の側も全部門の明細を要求するため、これを添付することになります。
一方、創業計画書については「1部門だけ」で資金繰りの計画表を提出することがほとんどです。理由は、始めから多くの事業に手を出すことを、公庫の審査担当者はよく思わないためです。後々複数の事業に手を出す予定だったとしても、創業計画書で最初に注力する1つの事業にだけ触れるのが基本となります。「最初から複数の事業を展開することに意味がある」という例外的なケースでなければ、詳細な計画表を出すのは1部門のみとなります。

4.過去の財務諸表の内容

過去の財務諸表については、創業計画書についてはまだ存在しません。逆に事業計画書はすでに存在するので、提出が必須となります。そして、この財務諸表の内容が計画書にも大きく影響します。創業計画書を書く段階では財務諸表がないため、ある程度自由に構想を語ることが可能です。しかし、事業計画書については財務諸表があるため、その内容と整合性のある計画を立てる必要があります。過去の実績から考えて「達成できる確率が高い」と審査担当者が判断できる計画を書く必要があるということです。

5.第三者機関の記入の必要性

創業計画書は自分一人で書けますが、事業計画書は自分一人では書けません。公庫に提出する事業計画書は項目1~6のうち、5と6は「認定経営革新等支援機関等」が記入する必要があります。「認定経営革新等支援機関等」とは具体的には金融機関や税理士事務所などです。中小企業庁の認定を受けた組織ですが、事業計画書ではこれらの機関に最後の2項目(所見と連絡先)を記入してもらわなければいけません。

 
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創業計画書の書き方

創業計画書の各項目に記入する内容は、以下の9項目です。各項目を「どのように書けば創業融資の審査を通りやすくなるか」というポイントも含めて解説していきます。

1.創業の動機
2.経営者の略歴等
3.取扱商品・サービス
4.取引先・取引関係等
5.従業員
6.お借入の状況
7.必要な資金と調達方法
8.事業の見通し
9.自由記述欄

1.創業の動機

1.創業の動機

どのような目的・動機で創業したかを書きます。記入欄は4行で、公庫が示す記入例の文字数は約100文字です。記入例の内容を要約すると「美容業に12年従事し、固定客も付いてきたため独立することにした」「○○駅の近くにいい物件が見つかった」と書かれています。

ポイント!

「なぜリスクを背負ってまでその事業を始めたいのか」という強い動機を伝えましょう後ろ向きの理由や成り行きまかせと思われる理由は書いてはなりません。また「昔からの夢だった」というような漠然とした自分本位の理由を書くのも避けるべきです。これらの動機が良くないのは単純に審査に通りにくいというだけでなく、そのような動機で創業しても事業の困難を乗り越えるのは難しいと考えられるためです。
創業の動機は何より本質的な思いが重要ですが、説得力のある数字も適度に盛り込むといいでしょう。それによって「現実を直視したうえでの理想」を伝えることができます

【例】
旅行代理店に勤務した13年のうち10年を、モルドバを含めた東欧の駐在員として過ごした。ヨーロッパ最貧国と呼ばれるモルドバでは、経済事情の厳しさを痛感した反面、同国産のワインの安さと質の高さに感銘を受けた。同国のワインを輸入し、日本でのブランドイメージを高めて販売すれば、利益につながるだけでなく同国の社会に貢献し、日本との友好にもつながると考えた。

2.経営者の略歴等

2.経営者の略歴等

立ち上げる事業に関する経営者の経歴を書きます。項目は略歴、過去の事業経験、取得資格、知的財産権等の4つです。
略歴は履歴書のように、年月と内容の2つに分けて記載していきます。「平成○年○月 ○○大学卒業」といった具合です。
過去の事業経験については、印字されている3項目のいずれかを選択します。「事業を経営していたことはない」「事業を経営していたことがあり、現在もその事業を続けている」「事業を経営していたことがあるが、既にその事業をやめている」の3つです。事業をやめている場合は、やめた時期も書きます。
取得資格は、特になし・有の2項目があり、有を選択したらカッコ内に資格の名称と取得年月を記入します。
知的財産権等は、特許や何らかの著作権を持っている場合に書き込む欄です。登録済みのものだけでなく、申請中のものも記載可能です。権利の概要を書き、申請中・登録済という欄にチェックを入れます。

ポイント!

過去の事業経験、取得資格、知的財産等については、書く内容が決まっているうえに欄もきわめて小さいので、ポイントは特にありません。この項目で重要なのは「略歴」です。
書き方自体は履歴書と同じですが、随所で自身の能力や経験をアピールしましょう。たとえば「平成○年○月 ○○大学卒業」なら、その大学生活で経験したことで事業のプラスになる内容を、カッコで添えて書きましょう。具体例をあげると下記のようなものです。

・首席で卒業
・第二言語で○○語を専攻
・優秀卒業論文賞を受賞
・卒論テーマ「○○」

表彰などを受けていなくても、事業と関連する内容であれば、それを経験したということだけでもプラスのアピールになります。

学歴だけでなく、職歴についても同じように実績をアピールしましょう。これから立ち上げる事業と関連のある実績を、数字も交えて具体的にアピールします。たとえば、営業代行の事業を立ち上げるのであれば「営業部の全社員700人中、年間1位を3度獲得」などと書けば、高く評価されるでしょう。このような高い実績がない場合でも、「創業分野との関わりの深さ」は積極的にアピールするべきです。
略歴には現在の勤務先も書きますが、月給も合わせて記載しましょう。月給が少なくてもマイナスになるとは限りません月給が少ない割に自己資金が多ければ「堅実に資金を貯めてきたまじめな事業者」と評価される可能性もあります。もちろん、月給も自己資金も少ない場合は、審査に落ちる恐れが大きいでしょう。
逆に月給が高く自己資金が豊富な場合は、もっとも審査で有利になります。自己資金が少ない場合は「堅実さに欠ける」と判断される恐れもあるでしょう。ただ、能力の高さを示せる点ではプラスになります。また、これから始める事業と関連する仕事であれば、事業での高い利益を見込めるため、プラスになるものです。
これから退職する場合は、退職予定と退職金の金額も書きましょう。退職金も自己資金の一部であり、重要な情報となるためです。

3.取扱商品・サービス

3.取扱商品・サービス

この項目は以下の4つに分かれています。

(1)取扱商品・サービスの内容
(2)セールスポイント
(3)販売ターゲット・販売戦略
(4)競合・市場など企業を取り巻く状況

(1)取扱商品・サービスの内容については、主力となるものを3つ書きます。記入する内容は概要と価格、売上シェアです。売上シェアは、その商品やサービスが自社の売上の何%を占めるかを書きます。この数値は予想や計画でかまいません。
その他の3項目は、それぞれ3行の記入欄があります。内容は言葉どおりで、セールスポイントなら「自社の商品やサービスの強み」を簡結に説明します。

ポイント!

(1)取扱商品・サービスの内容は、多数の商品やサービスを提供する場合、書きにくく感じるかもしれません。しかし、その場合は「事業の強みが明確になっていない」可能性があります。個人が一から立ち上げる事業で、デパートのように「何でも売る」ことはできません。
新規の事業にニーズがあるのは「これまで存在しなかった商品やサービスを集中的に売る」ことにあります。あるいは、商品やサービス自体は真新しくなくても「特定の人や企業に集中的に売る」ことが必要です。そのどちらかを満たしていれば、主力の3つの商品やサービスは自然とリストアップできることが多いでしょう。もちろん、事業によっては例外もあります。しかし、もし「3つに絞るのは無理」と感じたら上記のようなことを考え「何をする会社・何を売る会社かが明確になっているだろうか」と分析してみましょう。

(2)セールスポイント、(3)販売ターゲット・販売戦略、(4)競合・市場など企業を取り巻く状況については、実はすべて(1)取扱商品・サービスの内容の基礎になる内容です。(4)競合・市場など企業を取り巻く状況から逆算して考えるとわかりやすいでしょう。

(4)競合・市場など企業を取り巻く状況⇒状況はこうである

(3)販売ターゲット・販売戦略⇒だから、このような人にこう売る

(2)セールスポイント⇒そのために、こういう強みを持つ商品・サービスを作った

(1)取扱商品・サービスの内容⇒特にこの3つを売る

上記のように、ここに書く4項目はすべてつながっていると考えることができるのです。

4.取引先・取引関係等

4.取引先・取引関係等

この項目は以下の4つに分かれています。

(1)販売先
(2)仕入先
(3)外注先
(4)人件費の支払

(1)販売先、(2)仕入先、(3)外注先の3項目は、以下の内容を記載します。
・取引先名(名称・フリガナ・所在地)
・シェア
・掛取引の割合
・回収・支払の条件

取引先名は、(1)販売先と(2)仕入先は3行ありますが、3行目は「ほか○社」となっているため、詳細に記入するのは上位2社のみです。(3)外注先は2行しかなく、2行目が「ほか○社」となっているため、詳細に記入するのは上位1社のみになります。

(4)人件費の支払に記入する内容は、締め日と支払い日、ボーナスの支給月の3つです。いずれの項目も、すでに契約書や発注書などの書類があれば、そのコピーを添付します。

ポイント!

4項目の内、特に重要な(1)販売先と(2)仕入先について解説します。

(1)販売先
販売先については、小売業やサービス業では「一般個人」が売上の100%を占めるケースも多いでしょう。一般個人と記入する場合は、客層の詳細も合わせて書きます。年齢や性別、職業や居住エリアなどの情報が主なものです。特に現時点の勤務先から固定客を呼び込めることがわかっている場合、その割合も書きましょう。

(2)仕入先
仕入先がすでに決まっている場合、社名や大体の所在地、どのような商品を仕入れるか、どのような関係かなどを書きます。関係の例は「現在の勤務先の仕入先」などです。支払いを月単位などでする掛取引がある場合、その割合も書きます。
支払いのサイクルについては、締め日と支払い日を記入します。このスパンが長いほど取引先から信用されている証拠になるため、プラスの評価につながる可能性があるでしょう。ただし、あくまでそのスパンを契約書などで証明できる場合のみです。証明できない場合は参考程度の情報になると考えておきましょう。

5.従業員

5.従業員

人を雇うことが決まっている場合に、その人数を書く欄です。項目は以下の3つがあります。

・常勤役員の人数(法人のみ)
・従業員数(うち家族の人数)
・パート・アルバイト

従業員としてカウントする条件は「3カ月以上の継続雇用を予定していること」です。

ポイント!

従業員数がどう評価されるかは、事業の内容によります。大事なのは事業内容であり、この項目に神経を使う必要はありません。

6.お借入の状況

6.お借入の状況

プライベートで借入をしている場合は、それをすべて書きます。項目は以下の4つです。

・お借入先名
・お使いみち
・お借入残高
・年間返済額

お借入先名については、金融機関なら支店名まで書きます。
お使いみちについては、事業、住宅、車、教育、カード、その他の5つの項目から選択します。

事業ローンや住宅ローンなどは、それぞれ該当する項目を選択します。
カードは主にクレジットカードのショッピング、その他は医療ローンやブライダルローン、カードローンなどの借入で選択する項目です。

お借入残高と年間返済額については、それぞれの金額をそのまま記入します。

ポイント!

ここで大事なことは「完全に正直に書く」ということです。公庫は個人信用情報を照会して借入の状況を調べられるため、この項目について嘘は一切通用しません
「家族から借りて返済して、家族からの借入は創業計画書に書かなければいい」という考えも浮かぶかもしれません。しかし、家族からの借入についても記入欄がある以上、正直に申告する必要があります。万が一公庫への返済ができなくなったとき、家族からの借入があったことがわかったら、重度のペナルティを科せられる恐れがあります。この項目については「正直に書いたら審査に通らない」と思う時点で、まだ創業するべきではないといえるでしょう。

7.必要な資金と調達方法

7.必要な資金と調達方法

この項目は以下の3つに分かれます。

(1)設備資金(初期コスト)
(2)運転資金(ランニングコスト)
(3)調達の方法

(1)設備資金の欄では内訳、見積先、金額の3項目を記入します。
内訳の欄に店舗、車両、機械などの資金使途を書き、その金額と見積先の会社を書きます。この項目はただ計画を書くだけではなく、実際の見積書の添付が必要です。

(2)運転資金の欄では見積先は不要になり、内訳と金額だけを書きます。

(3)調達の方法については、以下の項目がすでに印字されています。

・自己資金
・親、兄弟、知人、友人等からの借入(内訳・返済方法)
・日本政策金融公庫、国民生活事業からの借入
・他の金融機関等からの借入(内訳・返済方法)

日本政策金融公庫、国民生活事業からの借入についてはこれから借りるものなので、希望金額を書きます。その他は、これから借りるものも、すでに借りているものも記入が必要です。

ポイント!

この項目については「書き方」は重要ではありません。重要なのは「資金の使い道自体がしっかりしている」ことです。当然のように感じられるかもしれませんが、これは創業の動機に次いで本質的な部分の1つといえます。
たとえば美容院を立ち上げる場合、通常はここに「シャンプー台×2」などと書くものです。しかし、そもそも美容院の居抜き店舗で事業を始めれば、これらの初期投資は不要になります。飲食業界でも、徹底して居抜き店舗を再利用するスタイルで「ロードサイドのハイエナ」の異名を持つ経営者が存在します。彼の場合は、創業計画書のこの項目に経営哲学の一端が現れていたでしょう。
「この備品が必要だから○○万円借りる」と計画することも大事ですが、そもそも「この備品は必要なのか?」と考えることも大事なのです

8.事業の見通し

8.事業の見通し

ここには「創業当初」と「1年後又は軌道に乗った後」について、以下の4つの項目を記入します。

・売上高
・売上原価(仕入高)
・経費(人件費、家賃、支払利息、その他)
・利益

1年後又は軌道に乗った後については、○年○月頃というおおよその時期も記入します。それぞれの数字を記入したら、右側の「売上高、売上原価(仕入高)、経費を計算された根拠をご記入ください。」という欄に根拠を書きます。

ポイント!

ここで重要なことは「見通しを楽観的にも悲観的にもしない」ということです。楽観的にした場合、審査担当者がその業界についての知見を持っていれば、「この経営者は現実が見えていない」と判断される恐れがあります。逆に悲観的にした場合、「こんなに自信のない経営者ではダメだ」「このペースでしか返済できないのでは融資できない」と判断される恐れもあるでしょう。

楽観的でも悲観的でもない的確な見通しを立てるには、事業の準備自体を綿密にする必要があります。具体的には以下のような努力をすることで、事業が計画通りに進む可能性が高くなっていくものです。
・自己資金が豊富なら資金繰りが崩壊する恐れが少ない
・自然災害の被害を受けにくい立地であれば、災害による打撃も少ない
・経営者本人の健康状態が良好なら、入院や急死などのリスクも少ない
こうして見ると、見通しとはむしろ「現実に行った準備そのものである」といってもいいでしょう。

9.自由記述欄

9.自由記述欄

ここに書く内容は文字通り自由です。創業計画書のひな形には、「追加でアピールしたいこと、事業を行ううえでの悩み、欲しいアドバイス等」と書かれています。

ポイント!

ここは文字通り自由な欄ですが、ひな形に書かれている「事業を行う上での悩み、欲しいアドバイス等」は、基本的には書かないほうがいいでしょう。ここで書くべき悩みがあるとすれば、たとえば「明らかに社会的な意義があるが、どう資金調達をすればいいかわからない」というようなケースです。「成功するかどうか不安」などの一般的な悩みを書くのは避けましょう

 
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まとめ

創業計画書の書き方を深く考えると、最終的には「事業の構想そのものをしっかりすることが大切」という結論になります。構想の甘い創業計画書でも融資の審査に通ることはしばしばあるものです。しかし、それで後々経営が行き詰まり倒産することになったら、融資の審査に落ちる以上に苦しい思いをするでしょう。先憂後楽という四字熟語のように、必要な苦労を先にして後で楽に事を運べるような経営を目指していくのが得策なのです。

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