起業時の資金調達は起業家の多くが頭を抱える問題です。2014年の中小企業基本法の第13条には、特に女性や青年の中小企業創業の促進を図るという文言が加えられ、日本政府が女性や若者たちの起業を支援する方針を打ち出しています。こういった背景から、女性の起業家を対象にした助成金や創業融資制度が増えてきました。女性の起業家向けの資金調達方法を紹介します。
助成金、補助金、融資の違い
起業時の資金調達方法は、助成金、補助金、融資という3つの方法があります。
助成金とは、国や地方公共団体に申し込みをして、審査に通れば受け取ることができるお金で、返済する必要はありません。補助金も助成金と似ていて、国や地方公共団体に申し込みをし、要件を満たした時に受け取ることのできるお金で、返済は不要です。助成金や補助金は、返済不要ということが大きなメリットです。しかし、補助金や助成金は募集期間が決まっていることが多いです。また、どちらも後払いで支払われることに注意しなければいけません。使えるキャッシュはどこか他から準備する必要があり、使ったものに対して支払われるのが助成金や補助金です。
一方、融資とは、銀行などがお金を貸してくれて、返済する必要があります。助成金や補助金と比較すると、返済しなければいけないことが大きなデメリットとはなりますが、金融機関の審査に通ればお金が即振り込まれ、キャッシュが使えるところがメリットです。
助成金、補助金制度
助成金、補助金制度は各市区町村の団体が独自に行なっている場合が多いです。
例えば、東京都中小企業振興公社では、「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」という制度があります。東京都内の商店街で女性又は若手男性が新規開業をするときに、店舗の新装や改装、設備導入などに必要な経費の一部を助成するという内容です。年に数回の応募期間が決まっていて、助成限度額は最大で730万円となっています。
その他に、自治体によっては、融資の際の利子補給、信用保証料補助などを援助してくれるところもあります。自治体によって募集期間から制度内容まで様々です。起業しようと考えている地域のホームページなどから補助金、助成金の情報を前もって調べておく必要があります。
また、地方自治体では資金調達以外にも、地域の地場産業活性化のために、女性起業家のネットワークを作ったり、女性起業家同士の勉強会や意見交換会、セミナーを開催している自治体もあります。自治体のホームページは、情報収集としても活用できます。
創業融資制度
金融機関に融資を申し込むときに、事業実績がなく、将来的な展望が全く読めない起業したばかりの会社は通常の融資審査に通らない可能性が高いです。実績が無い起業したての人やこれから起業する人にも融資してもらいやすいのが創業融資です。
女性向けの創業融資で代表的なのは、日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」です。申し込み条件は、女性または30歳未満か55歳以上で、新たに事業を始めるか、事業開始後7年未満の会社が対象です。融資限度額は7,200万円です。一定の要件を満たし、さらに金融機関の融資審査に通る必要があります。3,000万円内の融資額が希望であれば、同じく日本政策投資銀行の制度で無担保、無証人の「新創業融資制度」が利用できる場合があります。
地方自治体でも女性起業家向けの融資制度を設けているところが多いです。例えば、東京都では、「女性、若者、シニア、サポート事業」というプログラムがあり、東京都内に事業所を置く創業事業で、事業計画もしくは創業後5年以内の女性起業家が対象となります。融資限度額は1,500万円です。
女性起業家の課題とは
資金面の他にも女性起業家が直面している課題があります。統計として出ていたのが、「家庭との両立」や「経営知識の取得」です。女性起業家は、主婦から起業家に転身したという人や、子育てが一段落したので、長年温めていたアイディアを生かして起業した、という人も多いです。事業が軌道に乗って、好調になるほど、家庭と事業の両立が難しくなる場合があります。また、経営のバックグラウンドを持たずに起業した女性も多いです。起業と同時進行で経営の知識の取得が欠かせないという女性起業家も多いです。
国が女性の起業を促進している背景もあり、近年は地方自治体が中心となり、積極的に女性起業家を支援するサポート体制ができています。上述した地方自治体の女性起業家のネットワークや勉強会などは、まさに経営知識の取得に繋がります。
最近では、都市部を中心に「コワーキングスペース」と言われる、お母さんが仕事をする横で、小さな子どもが遊べる、親子が同じ空間で安心して過ごせるスペースもできてきて、家庭との両立に活かしている女性起業家もいます。
資金面の他にも情報収集は欠かせないものと言えそうです。
女性起業家に大切なこと
資金調達の特徴を理解し、使途や金額、タイミングなどによって助成金、補助金と創業融資とを使い分けることや組み合わせて活用する必要があります。どの資金調達方法を選んでも、事前の準備や情報収集は欠かせません。また、女性起業家の統計上の課題からもわかるように情報収集をこまめにして事業と生活の両面に情報を活用することも大切です。
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