起業するには資金調達を行う必要があり、多くの人は国が事業として行っている新創業融資制度を利用しています。これ以外にも利用できる融資制度はいくつもありますが、制度融資は中小企業が創業融資によく用いている制度です。どのような仕組みの制度になっているかをメリットやデメリットと共に理解して利用を検討してみましょう。
制度融資の概要と仕組み
制度融資とは創業融資の一つとして地方自治体、金融機関、信用保証協会の三つが協力して提供している融資制度です。基本的な融資の流れは次のようになっています。
まず必要なのが創業プラザや商工会議所等の窓口での申し込みです。窓口で申込書を受け取って記入し、必要書類を提出することで申請できます。その後に数回の面談を受けて内容が十分に条件に合っているとわかるとあっせん書の交付を受けることが可能です。このあっせん書を持参して、指定の金融機関の窓口に申し込みます。金融機関では書類による審査のみというのが一般的です。金融機関は提携している信用保証協会に信用保証を申し込み、引受許可が下りたら通常は融資が実行されます。信用保証協会の方から面談を求められたり、追加資料の提出を求められたりすることもあるので注意が必要です。
新創業融資制度の場合には日本政策金融公庫との直接のやり取りによって創業融資を受けられますが、制度融資の場合には三者が絡むという特徴があります。
なお、地方自治体として都道府県も市町村も実施していて、自分が居住している地域あるいは開業を予定している地域の制度を利用することが可能です。それぞれが異なる内容の制度融資を用意しているので、最も自分にとってメリットが大きいものを選んで申し込むことが重要になります。
制度融資のメリット
金利の低さ
制度融資を利用するメリットとしてまず挙げられるのが金利の低さです。一般的な金融機関からの融資に比べるとかなり低い金利水準になっていて、新創業融資制度よりも低くなっています。年利1%以下のものもあり、固定金利のものがほとんどなので安心して長期的な融資を受けられます。また、据置期間が長めに設定されている制度融資もあり、当面は金利分だけしか返さなくて良いので起業直後は利益を上げにくい事業を起ち上げるときでも心配を減らせるでしょう。
融資の受けやすさ
一方、融資の受けやすさでもメリットがあります。金融機関からの融資の場合にはかなり厳しい基準が設けられていて審査の通過に苦労しがちです。しかし、基本的には地方自治体による判断が融資の可否を大きく分けているのが制度融資の特徴で、金融機関による審査は厳しくはありません。自治体の段階でうまく基準に合うように事業内容を擦り合わせれば融資を受けることが肝心です。
補助制度
この他にも対象となる自治体によっては補助制度があるのもメリットです。信用保証協会に払う保証料を一部負担にさせてもらえたり、金利の一部を補助してくれたりする場合があります。この点もよく考えた上でどの自治体の制度融資を受けるかを考えるのが重要です。
制度融資のデメリット
融資実行までの期間
制度融資にはデメリットもかなりの数があります。最も大きな問題となるのが融資実行までにかかる期間の長さで、新創業融資制度であれば一ヶ月程度しかかからないのに対し、制度融資では二ヶ月以上かかるのが一般的です。また地方自治体によるあっせんを受けられるようにするために何度も面談を受けなければならず、信用保証協会での審査を通過しても、さらに金融機関で審査を受けなければなりません。そのため、かなりの審査期間が必要になってしまうのです。やり取りも一つの窓口では終わりません。起業するには時間も労力もかかるのは確かですが、制度融資を利用するときには十分な余裕を持って手続きを始め、全体の流れを理解して進めていくことが必須です。
自己資金要件
制度融資は自己資金の要件が厳しいのもデメリットになります。要求されている自己資金割合は自治体によって異なりますが、大きい場合には融資額の二分の一を要求されることもあるのが実情です。資金調達を必要とするのは自己資金がないからという場合も多いので切実な問題になる場合もあります。
連帯保証人
また、これに付随して連帯保証人を求められるのが一般的です。特に大きな融資を受けるときには連帯保証人を探すのに苦労することは否めないでしょう。
この他にもデメリットはあり、内容を自治体ごとに決められるので、いつの間にか内容が変わってしまって融資を受けられなくなるという可能性もあります。隣の市なら理想的な制度融資があるというケースもあるため、起業する場所や居住地の選定に悩まされることも多いのがデメリットです。
起業するときには制度融資も検討しよう
制度融資は中小企業が資金調達をする方法として低金利なのが大きなメリットです。自己資金が十分にあるか、連帯保証人を獲得できるときであれば大きな融資を受けられる可能性があります。自治体と金融機関、信用保証協会の協力によって行われていて、自治体によって内容には違いがあります。利用の際にはよく比較して選ぶことが大切です。
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