事業計画書は何のために作るのか
事業計画書とは、事業の内容や方針、戦略、売上などの数値計画の予測などを簡潔にまとめた資料です。
ビジネスをスタートする際や、事業年度が終わり次の期に向かう際に作成し将来の計画を立てるために利用するものです。
頭の中で考えていたり、会議などで断片的に確認するよりも抜けや漏れがなく自分の計画を確認することができますので事業に対する理解やイメージが深まります。
また、金融機関や投資家から資金を調達する際や、人材を採用する際も事業内容を説明する上でとても有用ですので事業を行っている方は必ず作成することをオススメします。
よく、日本政策金融公庫やその他の金融機関から資金調達を行うためだけに事業計画書や創業計画書を作成する方がいますが、俗にいう「絵に描いた餅」になりやすく、資金調達を受けた後は、全く見返さないということになる場合もあります。
日本政策金融公庫は事業計画書の提出フォーマットが決まっていて、事業計画書に盛り込むべき項目をすべて満たしているとは言えない部分もありますので、自身で再度作成する方が良いでしょう。
成功する事業計画書の3つの条件とは
事業計画書は第三者を説得する場面や、自社内での事業説明時に使用されますので、他の人が見ても分かりやすく作成する必要があります。成功する事業計画書に必要な3つの条件をご紹介します。
1 事業の内容・魅力が1分で語れる
人が他人の話を集中して聞けるのは1~3分が限度と言われています。
まずは、事業そのものに興味を持ってもらえなければ、その後の詳細な計画やビジョンも集中して聞いてもらうことはできません。
必ず事前に、人に聞いてもらいながら1分以内にプレゼンテーションする練習を行いましょう。
2 これからやるべき行動が明確
事業計画書において「計画」は非常に重要な項目です。
特に最も重要な項目が「行動計画・アクションプラン」です。
どんなに素晴らしい事業ビジョンや資金繰りの計画を立てても、実際に実行がされなければ意味がありません。
事業計画書を見た人が、すぐに自分の役割を理解して行動に移せるような事業計画書が良い事業計画書と言えます。
3 客観的事実が盛り込まれている
「こうなっていくだろう・・・」「こうなってほしい・・・」といった予測や希望的観測ではなく、過去の事実や実績、統計データなどから得られた客観的な事実を盛り込み説明ができる資料が良い事業計画書です。
実際にネット上で公開されている事業計画書の実例をご紹介
国内最大規模の画像・動画の素材サイト「PIXTA」の事業計画書
間違いなく成功事例にあげられる、国内最大規模の画像・動画の有料素材サイト「PIXTA」の事業計画書です。
2017年時点の売上高は、22.3億円です。
まず、素晴らしい点として、2枚目の資料で、語られる「ビジョン」が明確でわかりやすく、かつ時流を捉えている点です。
現在では、個人がコンテンツをYouTubeやInstagramなどを通して発信することは当たり前ですが、この事業計画書が作成された2006年当時は、まだまだ一般的ではありませんでした。
このように、将来のビジョンが明確な事業計画書は、聞いている立場の方を魅了します。
次に素晴らしい点は、13枚目の資料にある、メディア業界へのヒアリング内容を記載している点です。
よくある事業計画書が、このような事前の綿密な調査やヒアリングがなされていない、「絵に書いた餅」状態のものが非常に多いです。このように、現場に根ざしたビジネスはその後も成長しやすく、ユーザーに受け入れやすいと考えられます。
3億3000万円の資金調達時に使った、実際の「nanapi」企画書
レシピや暮らしのちょっとした情報を共有できるサイト「nanapi」の3億3000万円の資金調達時に使った実際の企画書です。
事業計画書はまた別にありますが、とても素晴らしいのでご紹介いたします。
まず、4枚目、5枚目の国内外の競合分析をしっかり行っていることが素晴らしいです。
当たり前ですが、自社のビジネスを構築する上でどのように他社と差別化するかは重要です。
15枚目の各フェーズでの戦い方が具体的に書かれている点も素晴らしいです。
これからやるべき行動が明確化されており、しかもすでにこの時、試験的に実際にブログを執筆して集客をしていたそうです。
具体的な行動プランと実際の結果による裏付けがある点は非常に説得力があります。
オンラインフリーマーケットサービス「Neimar」事業計画書
こちらは、現在サービスは運営されていないものの事業計画書になります。
明確に失敗したとは言い切れないと思いますが、失敗事例としてご紹介します。
10枚目の手数料の比較などは、とてもわかりやすく良いですが、やはり先程ご紹介したnanapiのように、競合他社を個別に分析する必要もありますので、その点が抜けてしまっています。
また、nanapiやPIXTAと比べると、実際のユーザーにヒアリングをした客観的なニーズや、事実が不足しています。
オープンイノベーションのプラットフォーム「WikiPlan」事業計画書
現在は、クローズしてしまっているようなのですが、事業計画書自体は、非常によくできています。
ここまで作成しても失敗することも、もちろんビジネスなのであるということで、ご紹介させていただきます。
19枚目の競合分析もしっかりと行われており、収益モデルも明確化されていて分かりやすいです。
ただ、ご紹介した成功事例の2社と比較してしまうと、実際のユーザーの声や、実行してみた事実などが薄いです。
50円で投資できるという素晴らしいコンセプトなのですが、PIXTAのように実際のユーザーの声を事前に調査して掲載するなど、客観的な事実を盛り込むべきだと言えます。
まとめ
成功する事業計画書と失敗する事業計画書ということで、実例を踏まえてご紹介させていただきました。
実際のビジネスでは、どれだけよい事業計画書を作成していても、競合他社の動向が変わったり、市場の変化によってビジネスが成長しないことも非常に多いです。
しかし、ビジネスのスタート時や、成長過程において、事業計画書を作成することは、非常に重要です。
当事務所では、創業時の事業計画書の作成を主にサポートさせていただいております。
事業計画書の作成方法がわからない、事業の相談にのってほしいという方は、お気軽にご連絡ください。
創業融資を利用するためには、事業計画書はもちろん重要です。
ただし、完璧な事業計画書があったとしても創業融資を受けられない可能性があります。
日本政策金融公庫の新創業融資制度を「確実に受けたい!」とお考えでしたら、以下をチェックしてみてくださいね。
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