会社を辞めて独立し、新たに起業をしたいとご相談をいただくことが最近増えております。
事業の内容によっては、まとまった初期費用がかかるものもあります。自分自身で貯蓄をしてから起業するのも立派な方法かもしれません。ただ、時間を短縮するために、金融機関から融資を受けるのも大変有効な手です。
当事務所では、これまでに15億円以上の日本政策金融公庫の融資をサポートしてきた実績からわかった起業家・創業者向けの金融機関である「日本政策金融公庫」について解説をさせていただきます。
はじめに|日本政策金融公庫とは(概要・金融公庫の役割)
日本政策金融公庫は、銀行や信用金庫など、一般の民間金融機関が行う融資事業を保管する目的で設置されている、日本の株式会社です。
かつては、「国民金融公庫」や「国民生活金融公庫」と呼ばれていましたが、2008年に株式会社として組織変更されたのです。以前の名残で、今でも日本政策金融公庫のことを「国金」と呼ぶ人もいますが、公式な略称は「日本公庫」です。
日本政策金融公庫は、金融の力で日本国民の生活全般を向上させることを中核的な目的としています。
平時には国民生活一般、あるいは農林水産業者や中小企業経営者のための資金調達を支援するのが主な役割です。一方で、国内外で金融秩序が混乱をきたしたり、あるいは大規模な災害やテロ、感染症などの被害が広がった場合など、国家の緊急時にはそのときに求められる金融機能を必要に応じて果たすことになっています。
日本生活金融公庫が、国民に対して融資を実行する場面は、主に3通りです。「国民生活事業」「中小企業事業」「農林水産事業」に分かれます。
国民生活事業
国民生活事業は、同公庫が個人事業主やベンチャー企業、あるいは新たに創業する国民に対して事業融資を行う営みであると位置づけられています。
税理士、公認会計士、中小企業診断士などの国家資格を保有する専門家と連携しながら、地域社会の発展に貢献するソーシャルビジネスや海外支援に対しても、積極的なバックアップを行うのです。
また、各地域に密着した住民に身近な金融機関として、子どもを持つ家庭に必要な教育資金を融資する役割も果たします。
さらに、日本は自然災害の多い国です。地震、台風、豪雪など、避けられない天災に見舞われた際にも、小規模事業者や個人事業主に対して、損失をカバーするための融資を行うことで早期の事業復旧をサポートします。
新たに独立開業する創業者・起業家への融資にも積極的です。
自分で道を切り拓き、社会に貢献しながら、自分の力で収入を得ようとする決意や努力は素晴らしいことです。しかし、新規事業を立ち上げる創業者に対して、銀行はなかなか融資を実行したがりません。
なぜなら、事業の実績がなく、収入証明書もない創業者については融資する材料が乏しいと考えるからです。しかし、日本政策金融公庫では、独自の審査基準で創業者に対して融資の実行が決まる可能性が十分にあります。
当事務所が主にサポートしているのは、国民生活事業の融資支援になります。
中小企業事業
中小企業事業は文字通り、日本各地の地域経済を支えている中小企業や自営業の人々について、その成長や維持を融資によって支援するものです。日本の会社の99%以上は中小企業だと言われています。
つまり、中小企業こそが日本経済を元気づける活力の源泉であって、そうした中小企業のバックアップは日本政策金融公庫の存在意義そのものであり、核となる事業のひとつです。
農林水産事業
農林水産事業は、自然と正面から向き合いながら社会的価値を生み出す第一次産業にあたる農業・林業・漁業を、融資などによってバックアップする事業です。日本は全方位を海に囲まれた島国であるだけでなく、国土のおよそ4分の3が山林に覆われています。温暖湿潤の気候も相まって多くの樹木や作物が育ちやすい国です。
そのような特性を活かしながら生産活動を行う農林水産事業者も、必要な不動産や機械の購入など、初期投資がかかり、しかもその投資を回収するのに長期間かかってしまいます。
また、自然を相手にして仕事をしているからこそ、年や時期によっては不作・不漁にも見舞われるのです。天候や自然環境の変化という不測の事態によって、ときに生活収入すらも不安定になってしまう農林水産業のリスクを、融資によってカバーする役割を担います。
日本政策金融公庫で創業時・起業時に利用できる「融資」の一覧
日本生活金融公庫が、新たにビジネスを興す創業者に対して融資を行う場面は、おもに「国民生活事業」に該当します。
利用できる融資一覧
創業時に使える融資のなかで代表的なものを一覧にしましたのでご参考にしてみてください。
新規開業資金
上記の中で、一般的によく使わるものが「新規開業資金」です。事業開始7年以内の方が対象ということで、幅広い創業者が利用可能です。
女性、若者/シニア起業家支援資金
また、創業者向け融資としては、女性起業家や、男性であっても35歳以下や55歳以上の起業家を低金利融資で支援する「女性、若者/シニア起業家支援資金」も提供されています。
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」は、過去に事業に失敗し、会社をたたんだり倒産に追い込んでしまったことがある元経営者が、新たに別の事業を始める場合に融資を受けることができる制度です。
これも、広い意味で創業・起業といえるでしょう。前の廃業がやむをえない理由によるものであり、廃業によって抱えている負債が、新たな事業に悪影響を与えない程度に整理されていることが条件となります。
中小企業経営力強化資金
税理士や中小企業診断士などの認定を受けている専門家の支援を受けることで金利の優遇や、特例を受けることができます。後ほど詳しくご説明させていただきます。
その他、下記などの業種や、厳密には創業ではありませんが、使える融資もございますので、該当する方は検討してみてもよいでしょう。
生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付)<特例貸付>
「生活衛生新企業育成資金(新企業育成・事業安定等貸付)<特例貸付>」は、人々の日常の暮らしに欠かせない生活衛生事業(飲食店・美容院・理容室・銭湯・サウナ・食肉小売業・旅館業・クリーニング業)などを新規に立ち上げる創業者や、創業からおおむね7年以内の事業者が対象となります。
こうした生活衛生関連の事業者に対して、比較的大規模な融資(最大で設備資金7億2,000万円・運転資金5,700万円)を実行する事業です。
「新事業活動促進資金」制度
「新事業活動促進資金」制度では、中小企業の第二創業を支援するための融資を行います。
第二創業とは、すでに事業を継続している中小企業や小規模事業者で、先代から後継者へ事業が引き継がれたとき、今までのやり方を刷新する業態転換を実行したり、今までとは異なる新たなジャンルの業態へ進出したりする多角化を図ることをいいます。
時代の変化などによって収益性が悪化した事業について、「このままではいけない」と敏感に察知し、積極的に状況の打開に乗り出している事業後継者を支援し、日本経済の活性化を金融面でサポートする事業です。
「経営革新計画」の承認を受けた人や、新業態に用いられる技術やノウハウ等に新規性がみられる人も対象となります。
どの融資が自分に該当するのか分からない方も多いと思います。お気軽にご相談いただければ、最適な融資プランをご提案させていただきます。
その他創業時に利用可能なオプション
上記の融資一覧に加えて、利用することのできるオプションをご説明します。
この中で、創業融資において非常によく使われる制度が「新創業融資制度」です。
これから新たに事業を始める人、あるいはすでに事業を開始しているものの、まだ税務申告を2期終えていない人が対象となります。新規事業ならすべて対象となるわけではなく、「雇用の創出を伴う事業を始める人」や「現在勤めている企業と同じ業種の事業を始める人」など、一定の条件が課されます。
銀行や信用金庫が、株式会社などの法人に融資する際は、代表個人が連帯保証人になることを求められる場合が大半です。
しかし、日本生活金融公庫の新創業融資制度では、「無担保」「無保証」が特徴ですので、法人への融資で代表個人が連帯保証を要求されることはありません。加えて、不動産などの担保を求められることもないのです。
将来に万が一、事業が上手くいかずに会社が倒産するしかなくなったとしても、個人が負債を抱え続けたり、大切な資産を失ったり、自己破産をせざるをえない状況にまで追い込まれたりすることもありません。よって、リスクが小さな状態で創業にチャレンジできる長所があるのです。
新創業融資制度は、新規開業資金や女性、若者/シニア起業家支援資金と併用することができます。いわゆる「オプション」のようなイメージです。新規創業融資制度を使うことで「無担保」「無保証」での融資が可能になります。
新創業融資制度は、誰もが一度しか使えないチャンスですので、ぜひ有効かつ慎重に活用しましょう。
また「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」では、日本政策金融公庫からの融資金を(金融検査上において)自己資本として取り扱うことができるメリットがあります。
そのほか、経常利益が上がっていない場合には金利が引き下げられる扱いになりますので、黒字化が難しい事業でもリスクを抑えながら挑戦できるのも特徴です。
新創業融資制度と中小企業経営力強化資金の比較
以上の貸付の中でも、この項目では「新創業融資制度」と「中小企業経営力強化資金」について、より詳しく説明します。
「新創業融資制度」は上記で、オプションとして使われるということをお伝えしましたが、「新規開業資金+新創業融資制度」や「女性、若者/シニア起業家支援資金+新創業融資制度」といった形で利用する場合がほとんどです。
これらの融資に対して、「中小企業経営力強化資金」は、専門家の指導を受けることで単体で無担保無保証の融資を受けることが可能になります。
この2つの融資が創業融資を受ける上では主に検討することになりますので、よく覚えておいてください。
ちなみに、専門家が書いているブログなどでは「中小企業経営力強化資金」のみをすすめる記事もありますが、「新創業融資制度」にもメリットがもちろんありますので、ご紹介させていただきます。
早く融資を受けたい方におすすめの「新創業融資制度」
対象者
新創業融資制度は、これから事業を始める人、さらにはすでに事業を始めた人で起業後おおむね7年以内の人のうち
「雇用の創出を伴う事業を始める人」
「現在勤めている企業と同じ業種の事業を始める人」
「産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める人」
「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める人」
「本資金の貸付金残高が1,000万円以内」
のいずれかの条件を満たしている創業者を対象にして、普通貸付よりも有利な条件で融資する制度です。
ここでいう特定創業支援事業とは、創業後間もない事業者を対象にして、企業経営に必要な基礎知識を目的とした、特定のセミナーや創業塾、個別相談会などを意味します。
これらを受講後に地元の自治体に申請すると受け取ることができる証明書を、公庫に提出するのです。
協調融資とは、ひとつの融資先に対し、日本政策金融公庫のほか、複数の金融機関が連携して「融資団」を形成したうえで、共通の貸付け条件などを取り決めて各金融機関が融資を行うことをいいます。
自己資金要件
また、創業資金総額の10分の1以上の自己資金(自力で貯めたお金)が確認できることも融資条件とされる場合があるので、前もって準備しておきましょう。
貸付限度額
新創業融資制度での融資限度額は、3,000万円となっています。そのうち、運転資金を目的にした融資は1,500万円が上限ですので注意しましょう。新創業融資制度を利用しなければ、初期投資に必要な設備資金として7,200万円まで借入れることができるのは確かですが、その後、本格的に事業を進めているうちに、運転資金が枯渇して追い込まれる可能性があります。
よって、運転資金の融資を受けられる枠の余裕をあらかじめ残しておくのが得策です。
返済期間
返済期間は、各種融資制度での設定条件に従います。たとえば、新規開業資金の場合、設備資金の借入れであれば20年以内、運転資金の借入れであれば7年以内と設定しなければなりません。そのうち、「据置期間」として、各2年間が設定されています。
たとえば、設備資金の返済期間を20年間と設定したとき、最初の2年間を金利のみの返済期間とすることができます。それ以降は元本も含めて返済しなければなりません。ただ、据置期間を設定することによって、創業初期のなかなか売上げが上がらない苦しい時期も、融資金の返済負担を軽くして、乗り切りやすくできるのです。
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より低金利で多くのお金を借りたい方におすすめの「中小企業経営力強化資金」
対象者
中小企業経営力強化資金は、実は創業時だけではなく、すでに事業をされている方でも使うことのできる融資制度です。
必ず、経営革新等支援機関(認定支援機関)に認定されている税理士や中小企業診断士の指導及び助言を受けることが条件です。
貸付限度額
貸付限度額は7,200万円で実際の限度額は2,000万円程度です。
新創業融資制度に比べて、金利も安く、自己資金要件もないことから、圧倒的に優れた融資制度だと思われがちですが、2年間の報告義務があり、決算書や確定申告書を認定支援機関に報告しなければいけません。ということは、認定支援機関との顧問契約が必須になるということです。
法人の場合、顧問税理士をつける場合が多いので、問題ないと思いますが、個人事業主の場合で中小企業経営力強化資金を利用する場合は、注意が必要です。必ず、顧問料も事前に確認しておいたほうがよいです。
日本政策金融公庫の金利
国民生活の向上を目的として運営されている日本政策金融公庫の金利は、事業者に対する融資金としては低い水準に抑えられています。
ここでは、新創業融資制度と、中小企業経営力強化資金に関する金利について、それぞれ解説しましょう。
新創業融資制度の金利
新創業融資制度の金利(年利)は、以下の通りとなります(2018年7月11日現在)。
基準利率…2.26~2.75%
特別利率A…1.86~2.35%
特別利率B…1.61~2.10%
最新の金利については日本政策金融公庫のサイトをご確認ください。
基本的には基準利率が適用されると考えていいでしょう。事業に用いる土地を取得するための資金について融資を受ける場合は、基準利率の適用です。
特別利率Aが適用されるのは、
「産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて、新たに事業を始める人の運転資金および設備資金」
「地域創業促進支援事業または潜在的創業者掘り起こし事業の認定創業スクールによる支援を受けて、新たに事業を始める人の運転資金および設備資金」
「Uターンなどにより地方で新たに事業を始める人の運転資金および設備資金」(以上はいずれも土地取得資金を除く)
「独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資(転換社債、新株引受権付社債、新株予約権および新株予約権付社債等を含む)を受けた人の設備資金・運転資金」
のいずれかに該当する場合です。
認定創業スクールは、地域にビジネスの力で貢献したい起業家が、経営学や会計・経済などの基本的知識からビジネスプランの策定まで指導を受ける場であり、中小企業庁が推進しています。
投資事業有限責任組合は、投資ビジネスを執行して、負債に対する無限責任を負うメンバーと、出資した額以上は責任を負わない有限責任メンバーが組み合わさった投資ファンドをいいます。
特別利率Bが適用されるのは、「技術・ノウハウ等に新規性がみられる人の運転資金および設備資金(土地取得資金を除く)」に該当する場合です。
中小企業経営力強化資金の金利
また、中小企業経営力強化資金は
「経営革新又は異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓などにより、市場の創出・開拓(新規開業を含む)を行おうとする人」
「自ら事業計画の策定を行い、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている人」
を対象にした融資制度です。
中小企業経営力強化資金の金利(年利)は、次の通りです(2018年7月11日現在)。
特別利率S…2.11~2.50%(2,000万円以内の無担保・無保証人部分を希望される方)
ただし、事業の中で「中小企業の会計に関する指針(中小会計指針)」および「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」を適用している人、または適用を予定している人については、これらの年利の「マイナス0.1%」とする金利割引特典があります。
中小会計指針は、上場企業向けの会計ルール(企業会計基準)までは不要な中小企業が、計算関係書類を作成するにあたって従うべき基準として策定された会計ガイドラインです。
日本税理士会連合会、日本公認会計士協会などの団体が、法務省や金融庁のバックアップを受けながら、内容が整備されました。そして、中小会計要領は、指針を受けて中小企業団体が話し合い、経営者らがより理解しやすい基準へとブラッシュアップしたものです。
日本政策金融公庫の融資で必要な書類
必ず提出する書類
借入申込書
融資に必要となる主要な書類は、借入申込書です。それに合わせて、具体的な資力や事業内容など、融資するかどうかの判断を行うにあたって必要な書類を提出することになります。
借入申込書には、氏名や社名、住所や電話番号などの基本事項の他、融資の申込金額や借入れの開始希望日(融資金が振り込まれる希望日)、毎月の返済期日や引き落とし先口座、さらに家族の氏名や住所などを記載します。
創業計画書
そのほか、申請する融資制度によって、必要書類がいくつか異なる場合があります。たとえば、創業融資でおもに必要となる書類は、借入申込書と「創業計画書」です。
創業計画書には、まず「創業の目的・動機」や「経営者の略歴等」を記載します。ここでは、なぜ事業を始めようと思ったのか、その思いや情熱、社会的意義や世の中への貢献性などが具体的に伝わってくる文章かどうかが問われるのです。
また、経営者自身が過去にどのような経歴を辿ってきたかで、創業の目的が将来達成される見込みを裏づけるだけの知識や技術、経験が身についているかどうかが確認されます。
「取扱商品・サービス」「取引先」「従業員」の欄では、創業によって世の中に提供される商品やサービスの具体的内容、セールスポイント、購入を狙う顧客ターゲット、外部の競合企業やビジネスパートナー、雇用予定の人員数などについて書き記します。
事業がどれほど具体化されているか、創業者がそのビジネスを取り巻く環境をどれだけ客観的かつ冷静に捉えているかを公庫側がチェックするのです。もっとも、いくら客観性や冷静さが大事とはいえ、ネガティブな事情を書きすぎるのはよくありません。
次は資金面です。「お借り入れの状況」の欄では、現在、融資を受けている先と、年間返済額や現時点での残高などについて正直に記載します。銀行からの住宅ローンやカーローン、学資ローンだけでなく、消費者金融での借入れやクレジットカードのキャッシング、銀行カードローンなどについても記載しましょう。
「必要な資金と調達方法」「事業の見通し(月平均)」は、融資判断で重視される項目です。それだけの金額がなぜ必要なのかを、設備資金と運転資金に分けて説明しましょう。黒字化できる見込みはどのタイミングで、どのような根拠で黒字が達成できるといえるか、数字を使いながら論理的に記載する必要があります。所定の創業計画書に書ききれない場合は、別紙を用意して図表やグラフなどを使いながら解説するのも効果的です。
身分証明書
また、身元を確認するため、個人は身分証明書が必要となる場合があるでしょう。法人については商業登記簿の謄本、あるいは履歴事項全部証明書の添付が求められます。
自身の通帳の写し
自己資金をどのように貯めてきたのかということを証明するために提出が必要です。
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事業用の預金通帳の写し
振り込まれている資本金の確認や、融資を実行することになった場合の振込先を確認するために必要です。
納税証明書
税金の滞納などがないか確認するために必要です。
設備投資の請求書や見積書
設備資金として融資を申し込む場合には、その設備を設置するのに必要な費用の見積書も取得したうえで、提出しなければなりません。
もし、飲食店や美容院、宿泊業など生活衛生関係の創業を行う人は、都道府県知事の推せん書(借入申込金額が500万円以下の場合は不要)か、生活衛生同業組合の「振興事業に係る資金証明書」の添付が必要です。
創業ではなく、すでに運営されている事業について、運転資金などの融資を申し込む場合には、「企業概要書」に詳しい事業内容や従業員数、今までの経緯などを記載して提出します。また、中小企業経営力強化資金の申込みであれば、創業計画書に似た「事業計画書」を作成し、今後のプランについて詳細な説明を行いましょう。
もし、不動産を担保に入れての融資を希望する場合は、所有する不動産の登記簿謄本か登記事項証明書の提出も必要となります。第三者の保証人を付ける場合は、事前にその保証人候補者の同意書をとっておくのが得策です。正式な保証契約書は、融資実行時に公庫側と取り交わすことになります。
開業費用の請求書
設備投資の見積書などと同様に創業計画書に記載した開業にかかる費用を証明できるものの提出が必要です。
既に支払った経費の請求書
自己資金の中から既に支払ってしまったものがある場合、そのことを証明するために必要です。
場合によって必要な書類
会社の登記簿謄本と定款
会社設立して日本政策金融公庫の創業融資を申し込む場合に必要です。
不動産の固定資産税納付署の写し
所有している不動産を担保提供(抵当権を設定)する場合に必要です。
返済予定表
住宅ローンや車のローン、カードローンなどがある場合は、借入残高がどのくらいかということを証明する必要があります。
そのために、返済予定表や返済状況がわかる資料の提出が必要です。
完済証明書
過去に金融機関からの借金やキャッシングなどで焦げ付き(返済不能になったこと)がある場合は、完済していることを証明するために必要です。
許可証や免許証等
許認可や資格が必要になる業種の場合に必要です。
店舗仮契約書
飲食店やカフェ、ショップなどの店舗を開業する場合には、契約状況などがわかるように店舗の仮契約書などが必要です。
創業融資の成功率を上げるために出したほうが良い書類
会社案内・パンフレット
公庫の担当者へ事業内容を説明する際などに役立ちます。また、しっかりと形になっているものを見せることで事業の熱意を伝えることもできます。
売上見込の見積書・契約書
創業計画書に記載した収支計画を裏付けるために、既に売上の見込みがある場合は提示した方がより融資を受けやすくなります。
取引先一覧表
仕入先や、顧客の一覧があれば作成して提示することで、創業計画書に記載した収支計画を裏付けることができます。
所有している権利関係の証明書
特許や、売上につながる権利を有している場合は、売上の根拠として提出した方が良いです。
日本政策金融公庫の融資の流れ
事前相談・申込み
融資の申込み自体は、公庫の支店を訪問するだけでなく、必要書類の郵送やインターネットでの送信でも可能です。
申込の受け付け先は、一般に、法人の経営者は本店所在地、個人事業主は事業所を基準として、その最寄りの支店となります。
融資申込みにあたって心配・不安な点や、公庫のサイトを見てもよくわからない点、そのほか創業にあたって相談したいことがある人々に向けて、専用の「事業資金相談ダイヤル」も用意されています。受付時間は、月曜から金曜の平日9時~17時までです。ただし、これから創業を考えている人や、まだ創業して間もない人、個人事業主、小規模企業の人については、19時まで受付時間を延長して対応しています。ぜひ気軽に利用してみましょう。
また、当事務所でも事前の相談を受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。
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あらかじめ作成した創業計画書や事業計画書などを持参して、最寄りの日本政策金融公庫のオフィスを訪れれば、より具体的なアドバイスを受けることができます。この場合も、事前に電話で問い合わせて、日時のアポイントを取っておくほうが印象はいいはずです。また、借入申込書などの必要書類を作成するときも、係の人から助言を受けながら進められますから、迷う必要もなく、スムーズに手続きを実行できます。
書類を郵送する場合、必要書類の内訳について事前に相談ダイヤルで確認しておいたほうが、再提出などの無駄な手間を防ぐことができます。インターネットで申し込んだ場合も、必要な添付書類を後日、来店や郵送で提出しなければなりません。
面談
次に行われるのは、融資を審査する担当者との面談日の設定です。面談の際は約束の日時までに、最寄りの支店へ足を運ばなければなりません。たとえ公共交通機関のトラブルがあろうと、遅刻は禁物ですから、30分~1時間ほどの余裕をもって支店の近くに待機しておいたほうが安心です。自営業やフリーランスの人であっても、面談のときにはラフな服装を避けましょう。スーツを着用し、男性ならネクタイを締めていったほうが、担当者に与える余計なイメージダウンを避けられるはずです。
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面談では、身分証明書や収入証明書、事業用の預金通帳などが確認されます。また、創業計画書・事業計画書・企業概要書に書かれた内容を中心に、改めて確認したい事項を尋ねられたり、不審な点や矛盾点などについて回答を求められることがあります。
厳しいことを言われたり、痛いところを突かれたりすることもあるかもしれません。
それでも、慌てたり苛立ったりすることなく、誠実に答える姿勢が重要となります。
融資審査の担当者は、あなたの敵ではありません。
日本生活金融公庫は、国民の生活全般を向上させることを目的に存在しているのですから、融資の申込者に対しては、基本的に「性善説」で向き合っているものと捉えるべきです。
場合によっては、回答の内容よりも、申込者の言動や立ち居振る舞いに、動揺や不安などが感じ取れないかがチェックされていることもあります。
嘘や大げさなことを言っているかどうか、あるいは経営者としてふさわしい自信や胆力などが備わっているかも見られていると、念頭に置いておきましょう。
審査
面談を終えれば、審査結果が出るまでの間、待つことになります。審査には1~2週間程度かかることが大半です。
融資申込みについて、満額回答の融資を得られる場合もあれば、一部のみの融資が実行される場合、そして、融資が断られる場合もあります。見事に融資実行が決まれば、必要に応じて来店して必要な手続きを済ませましょう。のちに融資金の振り込みが行われるのを確認して、ひとまずは手続き完了となります。
日本政策金融公庫の審査基準
日本政策金融公庫による融資実行の審査基準は、他の民間の銀行や信用金庫などに比べると、ゆるやかな部類に入ります。
たとえば、全国各地に支店があり誰もが名前を知っているメガバンクに、新規事業に必要な資金の創業融資を申し込んでも、まず間違いなく断られます。それに比べれば、日本政策金融公庫は、起業を志す人々に対して、門戸を広く開けている金融機関なのです。
融資担当者との面談を終えた後、いよいよ融資を実行するかどうかを検討する審査が行われます。ただ、主な審査を行うのは、面談で対話をした担当者ではありません。その上司による決裁を仰がなければならないのです。
まず、審査でチェックされるのは、返済能力があるかどうかです。
特に、すでに他の金融機関からの借入があり、毎月の返済がかなりの額にのぼっている場合は、融資判断に黄信号が灯ります。
消費者金融やキャッシング、カードローンのような年利10%を超える高金利の融資を受けている場合は、日本政策金融公庫の融資判断に不利となります。
1件だけ数十万円単位の残高がある程度なら、それだけで融資を断られることはありません。
しかし、できれば事前に返済しておくほうがいいでしょう。ただ、何件も借りていて債務超過状態に陥っている場合には、せっかく融資したお金を消費者金融などの返済に回されるのではないかと疑われるおそれがあります。
また、わずかな額であっても、融資申請の直前にカードローンなどで生活費を借りた形跡があれば、無計画にお金を使う傾向があるとみなされ、融資を断られてもおかしくありません。
また、将来その事業が十分に収益を得られるかどうか、計画の実効性や将来性もしっかりとチェックされます。
直近2~3期分の確定申告書や財務諸表などが検討され、着実に収益が上がっているのなら、問題なく返済されるものと判断されるはずです。
そのため、融資が実行される可能性は高まります。しかし、過去の経営実績が下降傾向だったり、赤字続きだったりすれば、将来の黒字化目標によほどの明確な根拠がない限り、融資判断には不利に作用するでしょう。
夢や希望だけを描いた絵空事を事業計画書に書いても、審査を行う公庫の上層部にはすぐに見破られます。
融資申込者の立場としては、数年後に収益が上がっている様子が明確にイメージできるような、地に足の着いた創業計画・事業計画を立てて、説得的かつ詳細に記載しなければなりません。
使い道が明確でない資金の融資、あるいは不確定要素が多い事業への融資も、公庫は慎重になります。ただ漠然と「工場の設備資金○万円」と書くのでなく、「○○製中古トラック○万円」「製造ラインの増設費用○万円」など、内訳までしっかりと書くことが重要です。
物品の購入予定金額も、実勢販売価格と懸け離れていない事業計画書のほうが、印象がいいのは間違いありません。また、ビジネスモデルが複雑な事業や、世界初に近いような斬新な事業への融資ですと、初回であれば審査に通常よりも日数がかかる場合もあります。
複雑なビジネスモデルが、イラストや写真、例え話や具体例なども交えて、イメージしやすい形で説明されていれば好印象となります。
特に創業融資では、創業者が自己資金をどれだけ貯めているかは、審査担当者にとって重大な関心事です。
自己資金の有無によって、もし、1,000万円の初期投資が必要な新規事業であれば、少なくとも自己資金を300万円は確保しておきたいところです。
自己資金が不要と謳う融資制度でも、自己資金を貯めてから申し込めば有利に違いありません。家族や友人から一時的にお金を借りて自己資金に見せかける「見せ金」は、通帳の記録からすぐに見破られますので、絶対にやめましょう。
不動産抵当権や保証人など、担保を入れている場合には、債務者本人に万が一の返済不能の事態が発生したときに、残債務を埋め合わせて十分に回収できる資力があるかどうかを確認するのも大切な手続きです。この資力が十分であれば、それだけでも融資実行の判断には有利となります。
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融資を有利に進められる!?ココだけの話
ここでは、日本政策金融公庫の融資申込みを有利に進めるためのコツをお伝えします。
まず、初めて融資を申し込む場合は、できるだけ少額に抑えておきましょう。100万円~300万円ほどの融資を受けて、無理なく着実に返済の実績を積み重ねるのです。
数千万円や数億円の融資希望ならば、その内訳を詳細かつ根拠立てて説明するのは難しいかもしれません。しかし、100万円であれば、たとえば中古の営業車両1台の購入費など、具体的な説明もしやすくなります。
公庫の融資金は金利が安いですが、そのぶん、1回の延滞に対して厳しい対応で臨みます。2~3回延滞すれば、次の融資を受けられる期待度は大幅に低下すると覚悟すべきなのです。
その代わり、引き落とし口座には常に十分な残高を確保し、毎月忘れずに返済を続けていれば、2回目の融資申込みはかなり有利となります。本来希望する融資金額を満額受けられる可能性も高まるでしょう。
また、必要書類のところでご説明した通り、創業計画書や事業計画書の「別紙」を作成するのは、定番ですがかなり有効です。
現在では、PCのプレゼンテーションソフトなどで、イラストや図表、グラフ、写真などをふんだんに盛り込んだビジュアル資料を、比較的簡単に作成できます。
文章のみの説明よりも、直感的にイメージしやすくなり、頭の中で想像して考える負担が軽くなるため、審査担当者に与える印象はよくなります。
公庫の担当者は、文章を読み慣れていますが、それでも短時間ですぐに内容を把握できるビジュアル資料を作成したほうが有利です。
もっとも、図表やイラストを1枚の紙にギッシリと詰め込んでは、かえって読みづらくなります。コンテンツを詰めすぎたと感じたら、ページを増やすのが常道です。それでも、別紙は全体で5~10ページ程度に抑えておきましょう。
別紙があまりにも大部になると、かえって印象が悪くなるリスクがあります。
日本政策金融公庫の融資実現の悩みに応える融資コンサルタントに依頼するのも、有効な方法です。別紙の作成法や面談での心構えなどについて、専門的なアドバイスを受けることもできます。
ただ、信頼に値するコンサルタントを慎重に選ばなければ、お金だけを取られて融資が実行されず、その失敗を依頼者のせいにされてしまうおそれがあります。
できれば、他の起業家から紹介を受けるようにしましょう。たとえ、元公庫勤務経験者だと名乗っていても、特に証拠が示されていなければ「詐称」の疑いが拭えません。
自身で探す場合は、インターネット上での評判を事前にしっかり検討する姿勢が大切です。そのコンサルタントがブログを書いていたり、メルマガを発行していたりすれば、それを読み込んでから判断するのも有効でしょう。
なお、創業融資であれば、それだけで融資に関して一歩有利なのも間違いありません。
なぜなら、すでに事業を走らせている経営者が運転資金の融資を申し込むのと異なり、創業者は過去の経営実績が一切問われずに「まっさら状態」だからです。
そのため、今までの社会人経験と新規事業の結びつきを整理して、創業計画さえ根拠立てて作成しておけば、融資実行の可能性はかなり高まります。創業計画書のクオリティが融資実行をほぼ左右するといっても、決して過言ではありません。
他方で、創業計画に具体性がなかったり、事業内容についての回答の歯切れが悪かったりすると、事業の実現性そのものが疑われてしまいます。どこを拠点に事業を行うのか、商品や原料はどこから仕入れて、在庫はどこに置くのか、どのような顧客層をターゲットにして、どの販路で、いくらで販売するのか、これらを詳細に確定しておかなければなりません。
もし、未確定の要素があれば、公庫への融資を申し込むのをいい機会として、具体的に確定させておきましょう。実際に、サンプル品の製造やテスト販売を行っておくと説得力が増します。
日本政策金融公庫は、国民の生活を守り、より向上させるための融資専門の金融機関です。
特に創業融資に積極的な姿勢で臨んでいますし、利息も安いです。よって、新規事業を考えている人々にとって、心強い味方となるに違いありません。
返済さえ誠実に続けていれば、事業の途中で資金繰りが苦しくなったピンチの局面でも、話を聞き入れて追加融資で助けてくれる可能性があるからです。
日本政策金融公庫の創業融資の無料診断実施中
当事務所では、日本政策金融公庫の創業融資を受ける方を対象に無料の事前診断を実施しています。
直接公庫に相談に出向いて、いきなり融資を受けようとするよりも確実に融資を受けることが可能です。
また、現在の状況や個人信用情報の関係から、創業融資が難しい場合は、他の方法での資金調達方法をおすすめすることも可能ですのでまずは、お気軽にご連絡をいただければと思います。
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