
円能寺修二
株式会社JNEXTコンサルティング DX推進担当
DX推進担当。中小企業向けの業務DXやシステム導入支援を中心に、業務設計からツール選定、システム開発、運用定着まで一貫してサポート。現場課題に寄り添った実装力を強みとし、会計・バックオフィス領域を中心に業務効率化を支援している。
DX推進の必要性を感じているものの、社内にDX推進人材や担当者がおらず、何から始めればよいかわからないと悩んでいませんか。
DX人材を採用したくても応募が集まらない、予算の都合で採用が難しいといった課題を抱える企業も少なくありません。
しかし、DX推進は必ずしも専門人材の採用から始める必要はありません。
既存社員の育成や外部専門家の活用など、自社の状況に合わせた方法を選ぶことで、DX推進を実現することは可能です。
本記事では、DX推進人材や担当者がいない企業が抱える課題を整理し、人材不足を補いながらDXを進める具体的な方法を解説します。
あわせて、よくある失敗パターンや、自社に合った対応の選び方も紹介します。
DX推進人材がいない企業が抱える課題
DX推進が進まない背景には、人材不足だけでなく複合的な課題があります。
中小企業が直面しやすい4つの課題を整理します。
中小企業でDX人材が不足している現状
大企業は高い給与水準や充実した研修制度でDX人材を引き寄せられますが、中小企業は条件面で不利なため、優秀な人材の確保が困難です。
DX人材に求められるスキルは多岐にわたります。
- デジタル技術の知識
- 業務プロセス改善の経験
- プロジェクトマネジメント能力
こうした多様なスキルを持つ人材は市場でも希少で、採用競争は激化しています。
中小企業でDX人材を採用できたとしても1人に業務が集中しがちで、担当者の退職とともにプロジェクトが止まるリスクもあります。
何から始めればよいかわからない
DX推進担当がいない企業の多くが直面するのが、「何から始めればよいか分からない」という壁です。
判断の手がかりがないまま、次のような状況に陥りがちです。
- クラウド・AI・IoT・RPAなどの用語は知っていても、自社業務への活用イメージが湧かない
- ネットで調べても大企業向けの事例が多く、自社の規模・業種に当てはまらない
- ベンダーの説明を聞いても専門用語が多く、適切な質問もできない
- 経営者が号令をかけても、従業員も知識がなく具体的な提案が出てこない
「とりあえず何かやってみよう」という場当たり的な対応になり、失敗を重ねてしまうケースが少なくありません。
採用したくてもDX人材を確保できない
DX人材の市場価値は高く、中小企業の給与水準では対応が難しいケースがほとんどです。
条件面の課題を整理すると、次のとおりです。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 給与水準 | DX人材が求める水準に応えられない |
| キャリアパス | 大企業と比べて成長機会が限られる |
| 採用コスト | 人材紹介会社の手数料も含めると高額になる |
| 退職リスク | 1人に依存する体制では離職時にプロジェクトが頓挫する |
| 地域格差 | 地方では都市部に比べてIT人材の絶対数が少ない |
採用という方法でDX人材を確保することは、中小企業にとって現実的でないケースが多いのが実情です。
DX推進が進まず競争力低下につながる
DX推進を先送りにすると、さまざまなリスクが顕在化します。
- 業務効率
手作業・紙管理・属人的な業務フローが放置され、競合との生産性の差が広がる - 顧客満足
オンライン対応や迅速な見積もりなど、顧客が期待するサービスレベルに応えられなくなる - 採用力
デジタル化が進んだ職場を求める求職者が増え、人材採用でも不利になる
DX推進の先送りは、業務効率・顧客満足・採用力のすべてに影響を与えます。
DX推進人材がいなくてもDXを進める方法
DX推進人材や専任担当者がいなくても、DX化を進める方法はあります。
自社の状況に合わせて次のアプローチを検討しましょう。
既存社員を育成してDX推進担当者を作る
外部からDX人材を採用できない場合、既存社員を育成してDX推進担当者を育てるアプローチが現実的です。
育成する社員を選ぶ際の重要な資質は次のとおりです。
IT知識の有無は問いません。
- 業務プロセスを深く理解している
- 改善意欲がある
- 新しいことを学ぶ姿勢がある
- コミュニケーション能力が高い
研修プログラムは、公的機関や民間企業が多数提供しています。
オンライン研修であれば、業務と並行して学習しやすいでしょう。
小規模なDXプロジェクトを担当し、外部専門家の支援を受けながら実践経験を積む方法も有効です。
育成には一定の期間が必要ですが、長期的には社内にノウハウが蓄積され、継続的なDX推進につながります。
外部のDX専門家を活用する
外部のDX専門家やコンサルタントを活用することで、社内にない専門知識と経験を補えます。
主なメリットは以下のとおりです。
- 多くの企業を支援してきた経験から、業種・規模に応じたアプローチを提案してもらえる
- 社内の利害関係に縛られない客観的な視点で、課題を率直に指摘してもらえる
- 「何から始めるか」「どのツールを選ぶか」など、初期段階の方向づけで失敗リスクを下げられる
- 外部専門家と一緒に進めることで、社内担当者が実務を通じて学べる
採用と比べて柔軟で、必要な期間だけ支援を受けられる点も中小企業には合っています。
システム会社に業務改善から相談する
ツールやシステムの導入が必要な場合、単に開発を依頼するのではなく、業務改善の提案も含めて相談できる開発会社を選ぶと、人材不足を補いやすくなります。
業務改善に強いシステム開発会社に依頼するメリットは次のとおりです。
- 現状の業務フローを分析し、改善提案からシステム構築まで一体的に進めてもらえる
- コンサルタントと開発会社が別々の場合に生じる認識のズレを防げる
- システム導入後の操作研修やトラブル対応など、長期的なサポートを受けられる
ただし、すべてを任せきりにならないよう、社内担当者も積極的に関与することが大切です。
副業・フリーランス人材を活用する
副業やフリーランスのDX人材を活用することで、正社員採用より柔軟にDX推進を始められます。
| メリット | 注意点 |
|---|---|
| 必要な期間だけ契約できる | 稼働時間が限られ緊急対応が難しい |
| 大企業経験者など多様な人材にアクセスできる | 秘密保持契約など情報管理の徹底が必要 |
| 正社員採用より低コストで始められる | 他案件との兼ね合いで継続性にリスクがある |
活用する際は、「戦略立案を依頼するのか」「実務支援を求めるのか」など、役割と期待する成果を事前に明確にしておきましょう。
4つの方法の比較
4つの方法にはそれぞれ特徴があり、自社の状況によって適した選択肢は異なります。
まずは各方法のメリットと注意点を比較し、自社に合う進め方を検討してみましょう。
| 方法 | 向いている企業 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 社内育成 | 時間をかけて取り組みたい | 社内にノウハウが蓄積される | 即効性はなく育成に時間がかかる |
| 外部専門家 | 早く成果を出したい | 豊富な経験と客観的な視点 | コストがかかる |
| システム会社 | システム導入も含めて一括で進めたい | 業務改善とシステム化を一体で進められる | 丸投げにならない関与が必要 |
| 副業・フリーランス | 低コストで柔軟に始めたい | 多様な人材にアクセスできる | 稼働時間・継続性にリスクがある |
自社でノウハウを蓄積したい場合は社内育成、早期に成果を求める場合は外部専門家の活用が向いています。
それぞれの特徴を理解したうえで、自社の課題や予算に合った方法を選ぶことが大切です。
DX推進がうまくいかない企業によくある失敗
DX推進に取り組んでも、うまく進まないケースがあります。
よくある4つの失敗パターンを押さえておきましょう。
DXツールを導入しただけで終わる
DX推進で最も多い失敗が、ツールを導入しただけで業務改善につながらないケースです。
導入前に確認すべきポイントは次のとおりです。
- 何のために使うのか(目的)が明確か
- どの業務課題を解決するのか(対象)が決まっているか
- 誰がどのように使うのか(運用体制)が設計されているか
ツール導入はあくまで手段です。
目的が曖昧なまま進めると、現場に定着しないまま使われなくなります。
DX推進の目的が社員に共有されていない
経営者がDX推進の必要性を感じていても、その目的や意図が社員に伝わっていないケースも多く見られます。
社員が感じやすい疑問を放置すると、抵抗感が生まれます。
- 「なぜDX化が必要なのか」
- 「自分たちの仕事にどう関係するのか」
- 「今の業務はどう変わるのか」
DX推進では技術面だけでなく、組織や人への働きかけも欠かせません。
経営層のビジョンを現場に丁寧に伝え、社員が「自分ごと」として取り組める環境を作ることが定着への近道です。
外部へ丸投げしてしまう
外部専門家やシステム開発会社に依頼する際、最も避けるべきは丸投げです。
丸投げによって起きやすい問題を整理します。
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 要件の食い違い | 業務の詳細を説明せず曖昧な依頼をすると、期待と異なる成果物ができあがる |
| 進捗確認の不足 | 途中経過を確認せず完成後に「こんなはずじゃなかった」と気づく |
| ノウハウが残らない | プロジェクト終了後も外部に依存し続ける状態になる |
業務要件の定義・優先順位の判断・最終的な意思決定は、必ず自社で行うという原則を守りましょう。
小さな成功体験を作れていない
DX推進を大きく構えすぎて、なかなか動き出せないケースも見られます。
最初から全社的な変革を目指すと、準備に時間がかかり実行前に頓挫しがちです。
まずは特定の業務や部署で小さく試し、成功体験を積み重ねることが重要です。
効果が出れば「うちでもできる」という自信が生まれ、社内の推進力が高まります。
完璧を求めず、小さく始めて少しずつ広げていくアプローチが、DX推進を継続させるコツです。
社内育成と外部支援はどちらを選ぶべき?
社内育成と外部支援、どちらを選べばよいか迷う経営者は多くいます。
それぞれが向いているケースを整理します。
社内育成が向いているケース
次のような状況では、社内育成を優先する方が長期的な効果を期待できます。
- 1〜2年かけてじっくりDXに取り組める時間的余裕がある
- 業務内容が特殊で、外部の専門家では理解が難しい
- 社内にノウハウを蓄積し、自走できる体制を作りたい
育成する社員はIT知識より業務への深い理解と改善意欲を重視して選ぶと良いでしょう。
外部支援が向いているケース
次のような状況では、外部支援を優先する方が現実的です。
- 競合他社の動きが速く、早急にDX化を進めなければならない
- 初めてのDX推進で方向性が定まらない
- 社内に育成できる人材や時間的余裕がない
初めてのDX推進では、まず外部専門家に道筋をつけてもらい、その後社内育成に移行するのがスムーズです。
社内育成と外部支援を併用する方法
最も効果的なのは、両方を組み合わせるアプローチです。
- 外部専門家と社内担当者がチームを組んでプロジェクトを進める
- 社内担当者は実務を通じてスキルを身につける
- プロジェクト終了後には社内にノウハウが残り、次のプロジェクトは自走できる
外部支援に頼りきりにならず、社内への知識移転を意識しながら進めることがポイントです。
DX推進人材がいない場合は専門家への相談も有効
DX推進人材や担当者がいない場合でも、自社で取り組める内容はあります。
しかし、判断に迷う場面や専門知識が必要な場面では、専門家の支援が有効です。
何から始めるべきかわからない
「DX化が必要だとは分かっているが、何から手をつければよいか分からない」という段階こそ、専門家への相談が最も効果的です。
専門家に相談すると、次のような支援を受けられます。
- 企業の規模・業種・予算・緊急性を総合的に判断した最適なロードマップの提示
- 採用・育成・外部活用それぞれのメリット・デメリットの整理
- 自社に合った現実的なアプローチの提案
無駄な試行錯誤を避け、効率的にDX推進をスタートできます。
DX推進担当を育成したい
社内育成を進めたいものの、次のような点で判断が難しいケースは専門家への相談が有効です。
- どの社員を育成対象にすべきか
- どのような研修プログラムが効果的か
- 育成にどれくらいの期間とコストがかかるか
育成中の社員が外部専門家と一緒にプロジェクトを進める形にすれば、実務を通じた成長も期待できます。
業務改善とDX推進を同時に進めたい
DX推進を単なるシステム導入にとどめず、業務プロセスや組織体制まで含めた変革として進めたい場合は、専門家への相談が有効です。
- 業務分析から改善提案・DX戦略の立案まで一貫して支援してもらえる
- 経営層と現場の橋渡し役として、全社が一体となって変革を進める体制を構築できる
- 限られた予算と人員の中で最大の効果を得るための優先順位づけができる
まとめ:小さな改善から始めることがDX推進成功への第一歩
DX推進人材がいない企業でも、社内育成や外部支援を活用することでDXを進めることは可能です。
まずは自社の課題に近い業務から小さく始め、成功体験を積み重ねていくことがDX推進成功への第一歩です。
- 既存社員の育成でDX推進担当者を育てる
- 外部の専門家やコンサルタントを活用する
- 業務改善に強いシステム会社に相談する
- 副業・フリーランス人材を柔軟に活用する
社内育成と外部支援を組み合わせることで、ノウハウを社内に蓄積しながら継続的な改善が可能になります。
早めに取り組むほど、業務効率化や競争力強化につながるでしょう。
JNEXTグループでは、DX推進人材や担当者がいない企業への支援を行っています。
人材確保の戦略立案から社内育成プログラムの設計、プロジェクトの伴走支援まで、一貫したサポートが強みです。
「何から始めればよいか分からない」「社内にDXを進められる人材がいない」といったお悩みがあれば、まずはお気軽にご相談ください。
無料相談も受け付けています。

