電子帳簿保存法対応チェックリスト|中小企業が確認したい保存ルールと進め方

電子帳簿保存法対応チェックリスト|中小企業が確認したい保存ルールと進め方
この記事の監修者

荻野岳雄
税理士法人JNEXT 代表社員

税理士/国税局OB。税理士法人JNEXT代表として中小企業の税務・経営支援に従事。DXを軸にした経営改善や税務戦略を得意とし、実務に基づく発信をYouTubeなどでも行っている。

電子帳簿保存法への対応について、「保存先を決めてデータを置けば十分」と考える方は少なくありません。
しかし、それだけでは「保存はできても探せない」「承認の記録が残らない」といった課題が生じるおそれがあります。
重要なのは、データの受領から確認、承認、保存、検索までの流れをひとつながりの業務として整えることです。

このテーマで検索する方の疑問は、大きく次の3つに分けられます。

  • 「法令に沿って正しく保存したい」(対応確認型)
  • 「請求書や領収書の電子保存を効率化したい」(業務改善型)
  • 「会計システムや経費精算までまとめて見直したい」(全体最適型)

本記事では、この3つの疑問に順番に応えながら、基本の要点と自社の対応度がわかるチェックリストをまとめました。

目次

電子帳簿保存法対応が「保存するだけ」では終わらない理由

電子帳簿保存法の論点は、「どこに保存するか」だけではありません。
必要なときに取り出せるか、紙と電子が混在しても運用が崩れないかまでが問われます。
まず、この法対応が経営課題になっている背景から見ていきます。

なぜ今、中小企業の経営課題になっているのか

中小企業で電子帳簿保存法対応が経営課題になっている背景には、法対応と業務効率化が切り離せなくなったことがあります。
以前は紙中心で回っていた会社でも、現在は次のような場面が増えています。

  • 請求書や領収書をメールで受け取る
  • 契約書をクラウドサービスで管理する
  • 電子データを複数の部署で扱う

そのため、電子データを扱うのは経理だけではありません。
営業、総務、購買、現場部門までが関わる前提で、業務が進むようになっています。

実務では、次のように書類の管理担当が分かれている会社もよく見られます。

  • 請求書は経理
  • 領収書は各部署
  • 契約書は営業

この状態で保存ルールだけを後付けすると、誰がいつ保存するのかが曖昧になり、確認作業が増えやすくなります。
電子帳簿保存法への対応は、法令対応であると同時に、バックオフィス全体を見直す取り組みでもあるのです。

運用設計を後回しにすると起こりやすいつまずき

電子帳簿保存法対応でよくあるつまずきは、クラウドストレージや証憑管理システムを導入した時点で、「対応できた」と考えてしまうことです。
保存先はあくまで箱にすぎません。
箱を用意しても、運用を設計しないと次のような問題が残ります。

  • 日付や取引先で探せず、確認のたびに時間がかかる
  • 承認の履歴が残らず、差戻しや差替えの経緯を追えない
  • 紙とPDFが混在し、担当者ごとに扱いが変わる
  • 会計仕訳と証憑の対応関係が曖昧になる

受け取る窓口が営業、確認が現場、支払依頼が経理、保存が総務と分かれている会社ほど、情報は途中で抜け落ちやすくなります。
保存先の選定より先に、業務の流れの整理が必要になるのはこのためです。

電子帳簿保存法対応の基本3点:電子取引データ・検索性・保存ルール

対応確認で最初に押さえたいのは、次の3点です。
どれも専門用語に見えますが、中身は「対象となるデータ・検索方法・保存ルール」を整理する考え方です。

① 電子取引データとは何か

電子取引データにあたる代表例は、次のとおりです。

  • メール添付で受け取った請求書
  • ECサイトの取引明細
  • クラウドサービスからダウンロードした領収書
  • 電子契約サービスで締結した契約書

これらは紙に印刷して保管するだけでは足りず、電子データのまま保存する前提で考える必要があります。

ここで混同しやすいのが、紙で受け取った書類を画像データとして保存する「スキャナ保存」との違いです。
最初から電子で授受したものと、紙をスキャンしたものでは、入口のルールが異なります。
受領方法ごとにルールを分け、そのうえで保存方法や検索方法の基準をそろえることが大切です。

② 検索性:必要な情報を取り出せる状態にする

電子取引データは、保存するだけではなく、原則として必要な条件で検索できる状態にしておく必要があります
たとえば、次の条件で検索できるようにしておくと安心です。

  • 日付
  • 金額
  • 取引先

「フォルダを月別に分ければ十分」と考えがちですが、検索方法を先に決めておかないと、「保存はできたのに探せない」状態に陥りやすくなります

なお、一定の条件を満たす場合には、検索要件が緩和される措置もあります。
自社が当てはまるかどうかは、国税庁の最新情報や税理士へ確認するとよいでしょう。

③ 保存ルール:担当者が代わっても続く決まりに

ファイル名の付け方、保存のタイミング、最終確認の担当は、社内ルールとして明文化しておきましょう
誤登録を訂正・削除するときの記録の残し方も、あらかじめ決めておきたい点です。
ここが曖昧だと担当者ごとに運用が変わり、長続きしません。

自社の電子帳簿保存法対応度チェックリスト

基本3点を踏まえて、自社の現在地を確認してみましょう。
次の表を確認し、当てはまる項目が少なければ、運用設計の見直しをおすすめします。

チェック項目確認する内容
対象の把握どの書類が電子取引データにあたるか整理できている
受領経路紙・メール・クラウドなど受け取り方を一覧化できている
検索性日付・金額・取引先で探せる形になっている
保存ルールファイル名・保存タイミング・最終確認者が決まっている
訂正削除誤登録時の訂正手順と記録の残し方が決まっている
権限設定閲覧・登録・承認の権限を必要な範囲で分けている
紙との混在紙で受け取った場合のスキャン担当と原本の扱いが決まっている
会計との連携証憑と仕訳の対応関係を後から追える

すべてに当てはまる会社は多くありません。
当てはまる項目が少ない場合は、次の順番で進めると迷いにくくなります。

  1. 現状確認
    どの書類を、誰が、どの経路で受け取り保存しているかを一覧にする
  2. 書類の仕分け
    電子取引データか、紙をスキャンする対象かを区別する
  3. ルール決め:検索条件・権限・訂正削除・例外の扱いを決めて文書にする

急いでシステムを入れるより、先にルールを固めたほうが後戻りは減ります
整理がついた項目から、次の業務別の対策へ進みましょう。

書類・業務別の電子帳簿保存法対応:請求書・領収書・契約書・経費精算

チェックリストで確認した課題は、書類や業務ごとに入口から整理すると改善しやすくなります。
代表的な4つを順に取り上げます。

請求書

メールや取引先ポータルで受け取った時点で、保存対象として扱うかを明確にします
取引先名、日付、金額で検索できる形に整えたうえで、承認から支払までの流れにつなげます。

領収書

紙で受け取る場面が残りやすいため、スキャン運用と電子データでの受領を分けて考えます
誰がスキャンするのか、原本をいつまで保管するのかも、あわせて決めておきたいところです。

契約書

締結方法によって保存の扱いが変わるため、電子契約と紙の契約を区別して整理します
法務や現場との連携が必要になる書類なので、経理だけで抱え込まないのがポイントです。

経費精算・支払業務

経費精算は、法対応と業務改善を同時に進めやすい分野です。
領収書をスマートフォンで撮影し、アプリで申請、承認後に会計へ連携する形にすると、紙の回収や転記を減らせます。
支払業務でも、請求書の受領から承認、会計計上、証憑保存までの流れがつながっていると、月末月初の負担を抑えやすくなります

逆に、申請は電子でも承認は口頭、保存は別フォルダという状態では、対応の負担だけが増えかねません。
効率化を進めるためには、会計システムとの連携も重要です。
特に、次の点を確認しておきましょう。

  • 証憑と仕訳がひも付いている
  • 承認完了時点で保存が確定する
  • 差戻しの履歴を追える

経理担当者が少ない中小企業ほど、一度入力した情報を何度も使い回せる設計が効率化の分かれ目になります。
どの書類も、最終的には「同じ基準で探せる状態」に寄せるのがゴールです。

電子帳簿保存法対応を自社で進める場合の注意点と相談の目安

最後に、電子帳簿保存法対応を社内だけで進める場合の注意点と、専門家へ相談する目安を見ていきましょう。
社内だけで進められるかどうかは、書類の量ではなく、「業務が部門をまたぐ度合い」によって判断しやすくなります。

社内だけで進めるときの注意点

すべてを理想どおりに電子化できる前提で、ルールを作らないでください
取引先や現場の事情で、紙が残る場面は必ず出てきます。
そこで決めておきたいのが、例外の扱いです。

  • 紙で受け取った書類は誰がスキャンするか
  • 原本はいつまで、どこに保管するか
  • 承認が対面や口頭になった場合、記録をどう残すか

例外を例外のまま放置しないルールのほうが、結果として長続きします。

電子帳簿保存法対応で専門家への相談を検討したいケース

次のような状態なら、社内だけで進めるより専門家と進めるほうが早く確実です。

  • 経理担当者だけが業務の全体像を把握している(属人化)
  • 部門ごとに書類の管理方法がばらばら
  • 会計ソフトと証憑管理がつながっていない

電子帳簿保存法への対応は税務だけのテーマではなく、営業、購買、総務、労務まで関わります。
部門横断で設計しないと整合が取れず、要件漏れや手戻りの原因になりがちです。
保存ルール作りにとどまらず、経費精算や会計連携まで含めて整えたい場合は、相談の価値が大きいでしょう

まとめ:電子帳簿保存法対応のゴールは「迷わず回る仕組み」です

電子帳簿保存法対応で目指すのは、「保存できる状態」ではなく「迷わず回る状態」です。
何を保存するか、どう探すか、誰が承認するか、紙が残る場合はどう扱うか。
この論点を一つずつ整理すれば、はじめて対応する企業でも着実に進められます。

JNEXTグループでは、税務・会計・労務にDX支援を加えた横断体制で、ルールづくりから業務設計までを支援しています
法令対応だけを目的にすると、守りの対応で終わりがちです。業務フローの改善まで視野を広げれば、経営管理の質そのものを高められます。

属人化や部門の分断を感じている場合は、一人で抱え込まず、専門家と一緒に進めることも検討してみてください。

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この記事を書いた人

JNEXTグループ編集部は、税務・会計・労務・DXなどの複雑な情報を、初めての方にも分かりやすく届けることを目的に活動しています。税理士、社会保障監修のもと、正確で実務に役立つ内容を丁寧に解説し、読者の不安を少しでも減らせる記事づくりを心がけています。

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