
荻野岳雄
税理士法人JNEXT 代表社員
税理士/国税局OB。税理士法人JNEXT代表として中小企業の税務・経営支援に従事。DXを軸にした経営改善や税務戦略を得意とし、実務に基づく発信をYouTubeなどでも行っている。
経理業務の効率化や情報の一元管理を目的に、経理システムの開発を検討している企業も多いのではないでしょうか。
しかし、いざ開発を進めようとしても、「どこに依頼すればよいのか分からない」「開発会社ごとの違いが分からない」と悩むケースは少なくありません。
依頼先によって得意分野やサポート範囲は大きく異なります。
自社に合わない会社を選ぶと、想定以上のコストや運用トラブルが発生する可能性もあるでしょう。
本記事では、経理システム開発の依頼先の種類と特徴、選定時の判断基準、よくある失敗パターンまでわかりやすく解説します。
経理システム開発の依頼先は5種類|それぞれの特徴を解説
経理システムの開発を依頼できる先は、大きく5つのタイプに分かれます。
それぞれの特徴を理解したうえで、自社に適した依頼先を検討しましょう。
大手SIer
大手システムインテグレーター(SIer)は、大規模なシステム開発を得意とする企業です。
要件定義から設計・開発・テスト・導入・運用保守まで一貫して対応でき、プロジェクト管理体制も整っています。
| 強み | 注意点 |
|---|---|
| 大企業向け基幹システムの豊富な実績 | 開発費用が高額になりやすい |
| 品質管理が厳格 | 中小企業の小規模案件には対応しにくい場合がある |
| 組織として継続的なサポートが可能 | 大規模プロジェクト前提の体制のため柔軟性が低い |
中堅・中小の開発会社
中堅・中小の開発会社は、柔軟な対応と適正価格が魅力です。
特定の業種や技術領域に特化した会社も多く、自社の業種に強い開発会社を見つければ業務理解が早く、スムーズな開発が期待できます。
| 強み | 注意点 |
|---|---|
| 中小企業のニーズに対応した提案が期待できる | 会社によって技術力や対応力に差がある |
| 業種特化の会社は業務理解が深い | 実績や評判を慎重に確認する必要がある |
| 費用が大手SIerより抑えられる | 大規模案件への対応力は限られる場合がある |
Web系開発会社
Web系開発会社は、クラウドベースの経理システム開発に適しています。
モバイル対応やリモートアクセス、複数拠点からの同時利用など、現代的な働き方に対応したシステムを得意とします。
| 強み | 注意点 |
|---|---|
| 開発スピードが速い | オンプレミス環境への対応が難しい場合がある |
| アジャイル開発で段階的にリリース可能 | 既存システムとの複雑な連携に対応できないことがある |
| 最新技術への対応力が高い | 経理業務への理解は会社によって差がある |
業務コンサルティング会社
業務コンサルティング会社は、業務改善とシステム開発を一体的に提供できる点が特徴です。
経理業務の専門知識を持つコンサルタントが要件定義に関わるため、業務に即したシステムが構築できます。
| 強み | 注意点 |
|---|---|
| 業務フローの見直しも含めて支援してもらえる | 開発を外部エンジニアに再委託するケースがある |
| 経理業務への深い理解がある | コストが割高になる傾向がある |
| 組織体制の改善も一体で進められる | 純粋なシステム開発力は開発会社に劣る場合がある |
フリーランスエンジニア
フリーランスエンジニアは、直接契約のため中間マージンが発生せず、コストを抑えられる点が魅力です。
エンジニアと直接やり取りできるため、意思疎通がスムーズで細かい要望にも柔軟に対応してもらえます。
ただし、以下のリスクには注意が必要です。
- プロジェクト管理の負担
進捗管理・品質管理を依頼者側で行う必要がある - 属人性のリスク
病気や事故で作業が止まった場合、プロジェクトが頓挫するおそれがある - 保守運用の問題
他のプロジェクトに移り、連絡が取れなくなるケースもある - 品質管理の課題
複数人によるコードレビューがなく、個人の裁量に依存する
フリーランスへの依頼は、比較的小規模で要件が明確な案件、かつ依頼者側にシステム開発の知識がある場合に適しています。
経理システム開発を検討する前に確認したいポイント
経理システム開発を進める前に、本当に独自開発が必要なのかを確認しておくことが大切です。
まずはパッケージソフトで対応できないケースや、開発時の注意点を整理しておきましょう。
パッケージソフトで対応できないケース
次のような状況では、独自開発を検討する価値があります。
- 業種特有の複雑な会計処理が必要な場合(建設業の工事進行基準、製造業の原価計算など)
- 販売管理・在庫管理・生産管理など、他の業務システムとの深い連携が必要な場合
- 複数事業部・多数拠点など、複雑な承認フローや権限管理が必要な場合
- M&Aや海外展開など、将来的な事業変化に柔軟に対応したい場合
会計特化型と汎用型の違い
開発会社によって得意分野は異なります。
会計業務に特化した会社と、幅広い業務システムを開発する会社では特徴が異なるため、自社の目的に合わせて選ぶことが大切です。
| 項目 | 会計特化型 | 汎用型 |
|---|---|---|
| 会計業務の理解 | 深い(仕訳・勘定科目・決算処理に精通) | 依頼者が詳細に説明する必要がある |
| 法令対応 | 電子帳簿保存法・会社法などに精通 | 依頼者側での確認が必要 |
| 複数システムの統合 | 経理に特化しているため限られる場合がある | 複数システムの統合開発が得意 |
| 最新技術への対応 | 会計領域に絞られる | AI活用・自動化など先進技術に強い |
自社の業務要件が複雑な場合は会計特化型、複数システムの統合や先進技術の活用を重視する場合は汎用型が向いています。
独自開発の注意点
独自開発には高額な初期投資と長期間の開発期間が必要です。
本当に独自開発が必要なのか、パッケージソフトのカスタマイズで対応できないか、慎重に検討しましょう。
独自開発を決断する前に、複数の専門家の意見を聞くことをおすすめします。
経理システム開発の依頼先を選ぶ判断基準
依頼先の種類を理解したら、次は具体的な選定基準を確認しましょう。
会計業務の知識と実績
最も重要な判断基準は、会計業務への理解と経理システム開発の実績です。
確認のポイントは次のとおりです。
- 開発会社のウェブサイトや会社案内で、経理・会計システムの具体的な開発事例が公開されているか
- 担当者との面談で「仕訳の自動化」「勘定科目の階層管理」「月次決算の自動化」などの用語が通じるか
- 自社と似た業種・規模での開発実績があるか
見た目の印象や営業トークだけで判断するのは禁物です。
経理システム開発において重要なのは、地味でも確実な業務理解と実装力です。
要件定義から保守まで対応可能か
システム開発は完成して終わりではありません。
運用開始後の保守・機能追加・法改正への対応など、長期的なサポートが必要です。
以下の点を確認しましょう。
- 要件定義の段階で、曖昧な要望を具体的な仕様に落とし込む能力があるか
- ウォーターフォール型・アジャイル型など、自社の状況に合った開発手法を採用できるか
- バグ発生時の対応時間・問い合わせ窓口・緊急時の連絡方法が明確か
- 法改正時の対応方針と追加費用の有無が事前に確認できるか
見積もりと開発期間の妥当性
見積もりの妥当性を判断するには、複数社から相見積もりを取ることが基本です。
確認すべきポイントは次のとおりです。
- 要件定義・設計・開発・テスト・導入支援・保守など、各工程の費用が明記されているか
- 追加費用が発生する条件(要件変更時・想定外の工数発生時など)が契約書に明記されているか
- 極端に短い開発期間を提示していないか(要件定義やテストを軽視している可能性がある)
価格の安さだけで選ぶのは危険です。
経理システムは企業の財務情報を扱う重要なシステムであり、適正価格で信頼できる品質を提供する会社を選ぶことが長期的にはコストパフォーマンスが高くなります。
セキュリティ・法令対応
経理システムは、財務情報・取引先情報・給与情報など機密性の高いデータを扱います。
以下の点を必ず確認しましょう。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| セキュリティ対策 | データ暗号化・アクセス権限管理・不正アクセス検知などの実装内容 |
| 認証・資格 | プライバシーマーク・ISMSなどの取得状況 |
| 法令対応 | 電子帳簿保存法・会社法・個人情報保護法などへの対応実績 |
| 法改正対応 | 改正時の対応方針・費用・期間の明確化 |
セキュリティや法令対応は後回しにしがちですが、経理システムの根幹をなす要素です。
この部分で問題が生じると、システム全体を作り直すことになりかねません。
経理システム開発でよくある失敗と対策
依頼先を選ぶ際に知っておきたい、よくある失敗パターンを4つ紹介します。
サポート体制が不十分
システム稼働後にバグが見つかっても対応が遅い、または対応してもらえないケースがあります。
特に月次決算や税務申告の時期に不具合が発生すると、企業活動に深刻な影響を与えます。
契約前に以下を明確にしておきましょう。
- 対応時間(平日のみか、夜間・休日対応があるか)
- 問い合わせ方法(電話・メール・チャット・リモート接続)
- バグ修正が無償か有償か、その判断基準
コミュニケーション不足
要件が正確に伝わらず、完成したシステムが期待と異なるケースも多く見られます。
「普通にできるだろう」と思っていた機能が実装されていない、といった事態を防ぐには次の対策が有効です。
- 要件定義の段階でワイヤーフレームやプロトタイプを作成し、操作感を確認する
- 月1回程度の進捗報告会を設け、課題や疑問点をその場で解消する
- 担当者が途中で変わる可能性があるか、引き継ぎ方法を事前に確認する
安さだけで選ぶ
開発費用の安さに注目し、保守費用やトータルコストを軽視するケースです。
開発費用が安くても保守費用が高額であれば、総コストは割高になります。
開発費用と保守費用を合わせた総保有コストで判断することが重要です。
要件定義を曖昧にする
「いい感じにやってください」という曖昧な依頼は、期待と異なる成果物が出来上がる原因です。
経理システムは依頼者が最も業務を理解しているはずです。
開発会社は技術のプロですが、業務のプロは依頼者自身。
両者が対等な立場で協力してこそ、使えるシステムが完成します。
経理システム開発の依頼先選びや要件整理に迷ったら専門家へ相談を
経理システム開発では、依頼先選びや要件定義で判断に迷うケースも少なくありません。
次のような場合は、専門家へ相談することでプロジェクトをスムーズに進めやすくなります。
自社に合う依頼先がわからない
依頼先の種類は分かっても、自社にとってどのタイプが最適か判断できない場合は、専門家への相談が有効です。
企業の規模・業種・予算・緊急性を総合的に判断し、最適なパートナー選定を支援してもらえます。
業務要件を整理できない
長年にわたって属人的に業務を行ってきた企業では、業務の全体像を把握できていないケースがあります。
たとえば、次のような課題です。
- 業務フローが担当者ごとに異なる
- 必要な機能が整理できていない
- 現状業務をそのままシステム化すべきか判断できない
第三者の視点から業務を分析してもらうことで、本当に必要な機能が見えてきます。
要件定義が明確になれば、開発会社への依頼もスムーズになり、結果的にコスト削減につながります。
開発と業務改善を同時に進めたい
経理システムの導入と同時に、経理規程の整備・内部統制の強化・複数システムの統合など、包括的な改革を進めたい場合は専門家のサポートが不可欠です。
全体を俯瞰した設計と、優先順位の整理を支援してもらえます。
まとめ:まずは自社に合う依頼先を見極めることから始めよう
経理システム開発を成功させるためには、依頼先の特徴を正しく理解し、自社の状況に合ったパートナーを選ぶことが第一歩です。
- 依頼先は大手SIer・中堅中小開発会社・Web系・コンサルティング会社・フリーランスの5タイプ
- 会計業務への理解と実績が最も重要な選定基準
- セキュリティ・法令対応・保守体制も必ず事前に確認する
- 安さだけでなく、総保有コストで判断する
- 要件定義を曖昧にせず、依頼者も積極的に関与する
JNEXTグループでは、経理システム開発の依頼先選定から業務要件の整理、開発会社との交渉支援、導入後のサポートまで、一貫して支援しています。
「どこに頼めばよいか分からない」「自社の要件を整理したい」といったお悩みがあれば、お気軽にお問い合わせください。

