離職率が下がらない会社の共通点と改善ステップとは

離職率が下がらない会社の共通点と改善ステップとは
この記事の監修者

平沢邦雄
JNEXT社会保険労務士法人 代表社員

企業の労務管理、社会保険手続き、人事制度設計などを中心に、数多くの法人・個人事業主を支援。実務に即したわかりやすい解説を得意とし、最新の法改正を踏まえた正確な情報提供を行っている。

「採用してもすぐに辞めてしまう」
「毎年一定数の社員が離職していて、会社が成長しない」
「何度か離職率改善に取り組んだが、効果が続かなかった」

こうした悩みを抱える経営者は、業種・規模を問わず非常に多く存在します。
離職率の高さは、採用コストの増加・組織の生産性低下・残った社員へのしわ寄せという悪循環を生み、会社の成長を根本から阻害する深刻な経営課題です。

しかし、離職率の改善は「給与を上げればよい」「福利厚生を充実させればよい」という単純な話ではありません。
離職の背景には複数の要因が絡み合っており、表面的な施策だけでは一時的な効果にとどまってしまいます。

本記事では、離職率が改善しない会社の共通点と根本原因を整理し、実効性のある改善ステップを専門家の視点からわかりやすく解説します。

目次

離職率の改善とは何か|現状把握と基本的な考え方

離職率の改善に取り組む前に、まず自社の現状を正確に把握することが大切です。
基本的な定義と、数値の読み解き方を整理しておきましょう。

「離職率」の定義と、自社の数値をどう読み解くか

離職率とは、一定期間内に在籍していた従業員のうち、その期間中に離職した従業員の割合を示す指標です。
一般的な計算式は以下のとおりです。

離職率(%)=(一定期間の離職者数 ÷ 期間開始時点の在籍者数)× 100

たとえば、期初に50名が在籍し、1年間で5名が退職した場合、離職率は10%となります。

厚生労働省が毎年公表する「雇用動向調査」によると、産業全体の平均離職率はおおむね15%前後で推移しています。
ただし、業種によって大きく異なります。

離職率が高い業種:宿泊業・飲食サービス業・生活関連サービス業(30%を超えるケースも)
離職率が低い業種:製造業・電気・ガス業(10%以下のケースも多い)

自社の離職率を読み解く際に重要なのは、単純な数値だけでなく「どの層が・いつ・どんな理由で辞めているか」という内訳の分析です。
全体の離職率が10%でも、そのほとんどが入社1年以内の早期離職であれば、採用・オンボーディングの問題として対策を講じる必要があります。

一方、10年以上のベテラン社員の退職が多い場合は、組織の構造的な問題や処遇への不満が背景にある可能性が高いです。

離職率が高い状態を放置すると会社経営にどんな影響が出るか

離職率の高い状態を放置すると、会社経営にはさまざまな深刻な影響が積み重なっていきます。

採用・教育コストの増大

1名の社員が退職すると、求人広告費・採用担当者の工数・面接コスト・入社後の研修費用など、採用から戦力化までにかかるコストは業種・職種によって異なりますが、一般的に1名あたり数十万円から数百万円にのぼるとされています。
離職が繰り返されるたびにこのコストが発生し、会社の収益を圧迫します。

残存社員への過負荷

退職者が出るたびに、残った社員が業務を肩代わりする状況が続くと、残存社員の疲弊・モチベーション低下・さらなる離職という悪循環が生まれます。
「辞めたら損」という意識で無理に働き続けた結果、優秀な人材ほど早く限界を迎えて退職するというケースも少なくありません。

組織の知識・ノウハウの流出

長く在籍した社員が退職することで、その人が持っていた業務知識・顧客情報・技術ノウハウが失われます
特に中小企業では、特定の社員への依存度が高いことが多く、退職による影響がより大きくなる傾向があります。

採用市場での評判低下

離職率の高さは、求職者や採用エージェントに伝わりやすく、「辞める人が多い会社」という評判が広がると、優秀な人材の採用がさらに難しくなるという悪循環に陥ります。

離職率改善に取り組む前に確認すべき「退職理由の実態把握」

離職率改善に取り組む前に、最も重要なステップが退職理由の実態を正確に把握することです。
「なぜ辞めているのか」の根本原因を特定しなければ、効果のない施策にリソースを投じることになります。

多くの会社では退職時に退職理由の申告を求めています。
しかし、退職者が本音を書かないケースは非常に多いです。
「一身上の都合」「家庭の事情」という表向きの理由の裏に、以下のような本音が隠れていることがほとんどです。

・職場環境への不満
・上司との関係
・評価への不満
・給与水準の問題

実態に近い退職理由を把握するためには、以下の方法が有効です。

退職面談の実施
直属上司ではなく、人事担当者や経営者が直接行う退職面談を設けることで、本音を引き出しやすくなります。
「今後の採用や職場改善に活かしたい」という姿勢を伝えることが重要です。

在職中の定期的なサーベイ
退職者だけでなく、在職中の社員に対して定期的に満足度調査(エンゲージメントサーベイ)を実施することで、離職予備軍の状況を早期に把握できます。

退職後のアンケート
退職してから一定期間が経過した後に、メールなどでアンケートを送ると、在職中よりも率直な意見が得られることがあります。

これらの方法を組み合わせることで、表面的な退職理由では見えてこない本音に近づくことができます。

離職率が改善しない原因と、具体的な対策・注意点

離職率が改善しない会社には、いくつかの共通した原因があります。
ここでは主な原因と、すぐに取り組める改善策を整理します。

原因①:入社後のフォロー不足による早期離職が繰り返されている

離職率が高い会社で最も多く見られる原因のひとつが、入社後のフォロー体制が不十分なことによる早期離職です。

入社後3ヶ月以内、あるいは1年以内に退職する「早期離職」は、採用コストが最も無駄になる形の離職です。
早期離職が繰り返されている会社では、オンボーディング(入社後の受け入れ・定着支援)のプロセスに問題があることが多いです。

具体的には、以下のような状況がよく見られます。

  • 入社後に「放置」される期間があり、何をすべきか分からないまま日が過ぎる
  • 「見て覚えろ」「聞いたら怒られる」という職場の雰囲気があり、質問しにくい
  • 採用面接で聞いていた仕事内容・職場環境と、実際が大きく異なっていた
  • 教育担当者が忙しく、新入社員のフォローに時間を割けていない

改善策として、次の2点に取り組むことが有効です。

  • オンボーディングプログラムの整備
    入社後30日・60日・90日のチェックポイントを設けて、定期的に面談を行う仕組みをつくりましょう。
  • 採用広報の見直し
    採用段階でのリアリティショック(理想と現実のギャップ)を防ぐために、採用広報の内容と実態の乖離を定期的に確認することも大切です。

入社後の早期離職は、採用プロセスと受け入れ体制の両方を改善しなければ根本解決にはなりません。
どちらか一方だけに取り組んでも、効果が限定的になる点を覚えておいてください。

原因②:評価・給与制度への不満が可視化されていない

離職率改善に取り組んでいる会社でも、見落とされがちなのが評価・給与制度への潜在的な不満です。

退職者が「評価制度への不満」を正直に伝えることは少ないため、表面的な退職理由からは把握しにくい問題ですが、実際には多くの離職の背景に評価・処遇への不満が存在しています。

特に問題になりやすいのが以下のようなケースです。

評価基準が不明確で、何をすれば評価されるかわからない
「頑張っているつもりだが、なぜ評価が上がらないかわからない」という不満は、モチベーションの低下と離職意欲の高まりに直結します。

同年代・同業他社との給与水準が見劣りする
転職市場の情報が手に入りやすくなった現在、自社の給与水準が市場と比較して低いことに社員が気づきやすくなっています。
特に、入社後数年が経過して業務経験を積んだ社員が転職市場での自分の価値を認識し始めると、離職リスクが急激に高まります。

評価結果のフィードバックが不十分
評価をつけるだけで、なぜその評価になったかを丁寧に説明しない場合、「なんとなく評価された・されなかった」という不信感が蓄積します。

改善策としての基本的なアプローチはこちらです。

・評価基準の透明化:何をすれば評価されるかを明確にし、社員に共有する
・評価結果のフィードバック面談の制度化:評価の理由を丁寧に説明する場を定期的に設ける
・定期的な市場水準との比較検討:同業他社の給与水準と自社を照らし合わせ、乖離がないかを確認する

評価・処遇への不満は表面化しにくいからこそ、制度と対話の両面から継続的に手を打っていきましょう。

原因③:管理職のマネジメントスキルに課題が生じている

離職の原因として、「上司・管理職との関係」が大きな割合を占めることは多くの調査で示されています。
「会社を辞めるのではなく、上司を辞める」という表現があるように、直属の上司との関係が離職の引き金になるケースは非常に多いです。

管理職のマネジメントスキルが不足している会社で見られる典型的な問題として、以下が挙げられます。

部下への過度なプレッシャー・高圧的な指導
叱責・暴言・パワーハラスメントに該当するような指導が行われている場合、被害を受けた社員だけでなく、周囲で見ていた社員のモチベーションも低下します。

部下の話を聞かない・相談に乗らない
業務の指示出しはするが、部下の悩みや困りごとに耳を傾けない管理職のもとでは、社員が孤立感を感じやすくなります。

適切な仕事の振り方ができない
部下の能力・経験に見合わない業務を無理に押しつける、逆に成長機会となる業務を与えないという偏った指示出しは、社員の意欲を削ぎます。

改善策として、次の取り組みが有効です。

・管理職向けのマネジメント研修の実施
1on1ミーティングの制度化
・360度フィードバックの導入

ただし、制度を整えるだけでは不十分です。
経営者自身が管理職のマネジメントの実態に関心を持ち、問題を把握する仕組みを整えることが、改善の土台となります。

対策の第一歩|「どの層・時期に離職が集中しているか」を数値で見える化する

離職率改善に着手する際、最初に行うべきことは離職データの見える化です。
感覚や印象ではなく、データに基づいて問題の所在を特定することが、効果的な対策の前提となります。

具体的には、過去2〜3年間の離職データを以下の観点で集計・分析します。

在籍期間別の離職分布
入社1年以内・1〜3年・3〜5年・5年以上という在籍期間別に離職者数を集計します。
どの時期に離職が集中しているかで、対策の優先順位が変わります。

部署・職種別の離職分布
特定の部署や職種に離職が偏っていないかを確認します。
特定の部署だけ離職率が高い場合は、その部署のマネジメントや業務環境に課題がある可能性が高いです。

年齢・雇用形態別の離職分布
若手社員・中堅社員・ベテラン社員でそれぞれどの程度離職しているかを把握します。
雇用形態(正社員・パート・契約社員)ごとの離職率も確認しましょう。

退職理由の分類集計
退職届や退職面談から把握できる範囲で、退職理由を分類・集計します。
「一身上の都合」という回答が多い場合でも、面談記録などから傾向を読み取ることが重要です。

このデータ分析を行うことで、「新入社員の早期離職が全体の離職率を押し上げている」「特定の部署の離職率が全社平均の2倍以上ある」といった具体的な問題箇所が見えてきます。
問題が特定できれば、そこに集中した改善策を優先的に実施することができます。

離職率改善を進めるうえで見落としがちな注意点(表面的な対策に終わらせないために)

離職率改善に取り組む際に、多くの会社で見られる落とし穴が表面的な対策に終わってしまうことです。

よくある失敗例はこちらです。

・福利厚生を充実させたが離職率は変わらなかった
・給与を一律に上げたが、効果が出なかった

これらの施策は決して無意味ではありませんが、離職の根本原因が解消されていない場合には効果が限定的です。

表面的な対策に終わらせないために意識すべきポイントは次の3点です。

施策を打つ前に根本原因を特定する

退職理由の実態把握・離職データの分析を行わずに施策を始めると、課題と施策がミスマッチになります。
「なぜ辞めているのか」の仮説を立て、それに対応した施策を設計することが重要です。

施策の効果を測定する仕組みを設ける

取り組みを始めたら、定期的に離職率・エンゲージメントスコア・定着率などの数値を確認し、効果が出ているかを検証します。
効果が見られない場合は原因を再分析し、施策を見直すPDCAサイクルを回すことが不可欠です。

経営者・管理職の意識変革も並行して進める

制度を整えても、経営者や管理職の言動・文化が変わらなければ、社員は変化を感じられません。
特に管理職のマネジメントの質は、制度設計と同じかそれ以上に離職率に影響します。
研修や1on1の導入と合わせて、経営者自身も組織の変化に積極的に関与することが重要です。

専門家への相談を検討すべきタイミングと活用法

離職率の改善は自社内で取り組める部分もありますが、状況によっては専門家のサポートを活用したほうが確実です。
ここでは、相談を検討すべき基準と、専門家に依頼することで変わることを整理します。

専門家への相談を検討すべきケース

以下のような状況に当てはまる場合は、専門家への相談を早めに検討することをおすすめします。

  • 複数回改善施策を実施してきたが、離職率が一向に下がらない
  • 退職理由の実態が把握できておらず、何が問題かわからない状態が続いている
  • 評価制度・給与制度の見直しが必要と感じているが、自社だけでは設計が難しい
  • 管理職のマネジメントに問題があると感じているが、どう対応すればよいかわからない
  • 採用コストが増加し続けており、このままでは経営的に持続できないと感じている
  • パワーハラスメントや労働環境に関する問題が発生しており、法的リスクも心配

離職率の問題がパワーハラスメントや労働基準法違反と関連している可能性がある場合は、法的リスクの観点からも早急に専門家への相談を検討してください。
問題が顕在化してからでは対応コストが大幅に増加するため、早期の対応が重要です。

専門家に相談すると離職率改善の取り組みがどう変わるか(支援範囲の要件整理)

社労士・人事コンサルタント・組織開発の専門家に相談することで、離職率改善の取り組みが次のように変わります。

客観的な現状分析と根本原因の特定をサポート

退職者インタビュー・在職者サーベイ・離職データの分析を専門家が行うことで、経営者だけでは気づきにくい組織の問題点を客観的に把握できます。
「何が問題かわからない」という段階から整理してもらえる点が、専門家活用の大きな価値です。

評価制度・給与制度の設計・見直しを支援

同業他社の水準・労働市場の相場・自社の人件費構造を踏まえたうえで、現実的かつ公正な評価・給与制度の設計をサポートしてもらえます。
制度設計だけでなく、社員への説明・導入時のフォローまで対応してもらえる専門家であれば、制度の定着もスムーズです。

管理職向けの研修・コーチング支援

マネジメントスキルの向上は一朝一夕には実現しませんが、専門家が設計した研修プログラム・1on1の導入支援・管理職個別へのコーチングを組み合わせることで、組織全体の管理職の質を底上げできます。

継続的な改善サイクルの構築をサポート

単発の施策ではなく、毎月・四半期ごとの離職率・エンゲージメントの定点観測と、データに基づいた継続的な改善サイクルを構築してもらえることで、離職率改善の取り組みを組織に根付かせることができます。

相談先・社労士・コンサルを選ぶ際に確認しておきたい3つのポイント

離職率改善の支援を依頼する専門家を選ぶ際には、次の3点を確認するとよいでしょう。

自社の業種・規模での組織改善・離職率改善の支援実績があるか

離職率の課題は業種や組織の特性によって大きく異なります。
小売・飲食・介護などの人材確保が難しい業種での実績がある専門家であれば、業界特有の課題を踏まえた実践的な提案が期待できます。
抽象的なコンサルティングではなく、具体的な支援実績を確認することが重要です。

労務管理・評価制度・組織開発を横断的にカバーできるか

離職率改善は、就業規則・評価制度・採用・教育・マネジメント開発と多岐にわたる要素が絡み合います。
一つの領域だけに強い専門家では、部分的な対応にとどまる可能性があります。
人事・労務・組織を総合的に見ることができる専門家に相談することで、より包括的な改善が期待できます。

現場に寄り添った実行支援まで対応できるか

コンサルティング会社の中には、課題分析と提言書の提出で支援が終わるケースもあります。
離職率改善のような組織変革は、提言を実行し定着させる段階が最も難しく、最も重要です。
計画の立案から実行支援・効果測定・改善サイクルの構築まで伴走してもらえる専門家を選ぶことが、実質的な成果につながります。

まとめ|離職率改善は「データで見える化」してから動く

離職率の改善は、表面的な施策ではなく根本原因を特定することから始まります。
ここで改めて、押さえておきたいポイントを振り返っておきましょう。

・退職理由の実態を把握し、離職データを分析して問題箇所を特定する
・評価制度・マネジメント・オンボーディングを総合的に見直す
・施策の効果を定期的に測定し、PDCAサイクルで継続的に改善する

自社だけでの対応が難しい場合は、専門家のサポートを活用することで、より確実に離職率改善を進めることができます。

離職率の改善について、自社の現状を整理したい方や、根本原因の特定から具体的な改善策を一緒に設計したい方は、ぜひ JNEXTグループ へのご相談をご検討ください
労務管理・人事制度設計・組織改善からバックオフィス全体の業務効率化まで、貴社の状況に合わせた実践的なサポートを提供しています。

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この記事を書いた人

JNEXTグループ編集部は、税務・会計・労務・DXなどの複雑な情報を、初めての方にも分かりやすく届けることを目的に活動しています。税理士、社会保障監修のもと、正確で実務に役立つ内容を丁寧に解説し、読者の不安を少しでも減らせる記事づくりを心がけています。

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