ワークフローシステム導入前に確認したい「承認後の記録」|申請別のポイント

ワークフローシステム導入前に確認したい、承認後に残す記録のポイント
この記事の監修者

円能寺修二
株式会社JNEXTコンサルティング DX推進担当

DX推進担当。中小企業向けの業務DXやシステム導入支援を中心に、業務設計からツール選定、システム開発、運用定着まで一貫してサポート。現場課題に寄り添った実装力を強みとし、会計・バックオフィス領域を中心に業務効率化を支援している。

稟議書が部長の机に置かれたまま、出張から戻る日を待っている。
担当者が承認をひとつもらうために、別の階まで書類を運んでいる。

ワークフローシステムを導入すれば、このような紙の回覧や承認待ちを減らせます。
ただし、承認が速くなるかどうかだけで製品を決めるのは十分ではありません。

もうひとつ確認したいのが、承認後にどのような記録が残るかです。
申請内容や承認履歴、添付した請求書などをあとから探せなければ、経理処理や監査の際に手間がかかります。

この記事では、ワークフローシステムの導入を検討している方に向けて、申請の種類ごとに残したい記録を整理します。
製品の説明やデモで確認したい質問も紹介するので、比較の際にお役立てください。

目次

ワークフローシステムとは、申請と承認を電子化する仕組み

ワークフローシステムとは、社内の申請を電子化し、決められた順番で承認者へ回す仕組みです。
「稟議システム」や「電子決裁システム」と呼ばれることもあります。

主な対象は、次のような申請です。

  • 稟議書
  • 購買申請・支払依頼
  • 経費精算・出張旅費の精算
  • 残業・休暇の申請
  • 契約締結の決裁・押印申請
  • 備品購入・取引先の登録申請

紙の申請では、書類がどこで止まっているのか分かりません。
ワークフローシステムなら、申請の状況を画面で確認できます。
外出先から承認できる製品もあるでしょう。

さらに、誰がいつ承認したのか、なぜ差し戻したのかといった履歴も残せます。
ただし、残せる内容や保存期間、検索方法は製品や契約プラン、設定によって変わるものです。

導入による一般的な効果や業務の見直し方は、バックオフィス効率化の記事で詳しく解説しています。

ワークフローシステムを選ぶときは承認後の3点を確認する

製品を比較するときは、申請画面の使いやすさや承認の速さに目が向きがちです。
しかし、承認が終わったあとの業務まで考えておく必要があります。
確認したいのは、次の3点です。

1.申請内容と承認履歴が残るか

あとから確認したいのは、最終的な申請内容だけではありません。
誰がいつ承認したのか、差し戻し後に何を修正したのかも重要です。
製品を比較するときは、次の内容が記録されるか確認します。

  • 申請者と申請日時
  • 承認者と承認日時
  • 差し戻しや却下の理由
  • 申請内容を変更した履歴
  • 承認時に添付されていたファイル

承認後に内容を変更できる製品では、変更前の記録が残るかどうかも確かめてください。

2.添付書類の保存先が決まっているか

購買申請には見積書、支払依頼には請求書、経費精算には領収書が添付されます。
ワークフロー上で承認が終わっても、添付書類の保存まで完了しているとは限りません。

承認後もワークフローシステム内に保存するのか、会計システムや文書管理システムへ移すのか。
この点を先に決めておくほうが、あとの手戻りは少なくて済むはずです。
別のシステムへ移す場合は、自動で連携できるのか、担当者の手作業になるのかも確かめておきましょう。

3.必要な記録をあとから探して出せるか

記録を残していても、必要なときに見つからなければ業務では使えないでしょう。
申請日、申請者、取引先、金額、申請番号など、業務に必要な条件で検索できるか確認しましょう。
検索結果や添付書類を出力できるか、解約時にデータを取り出せるかも重要です。

あわせて確認したいのが、申請番号を会計システム側にも残せるかどうかです。
スキャナ保存する重要書類には、帳簿との関係をあとから確認できる状態が求められます。
ワークフローシステムの申請番号を会計側にも残せれば、申請、添付書類、仕訳を順にたどれるでしょう。

名称が申請番号である必要はありません。
伝票番号など、両方を結び付けられる共通の番号であれば十分です。

申請別|ワークフローシステムに残したい記録

すべての申請に同じ保存方法を当てはめる必要はありません。
申請の目的と、承認後に続く業務を一緒に考えると、必要な機能を整理しやすくなります。

申請の種類承認後に確認したい記録製品選定で見るポイント
購買申請・支払依頼申請内容、承認履歴、見積書・請求書添付書類の保存先、会計システムとの連携、検索条件
経費精算申請内容、承認履歴、領収書スマートフォンでの提出、画像の確認、訂正・削除履歴
残業・休暇申請申請内容、承認履歴、実際の勤怠記録勤怠システムとの連携、申請時間と実績の比較
契約締結・押印申請決裁内容、承認履歴、契約書電子契約・文書管理との連携、契約書の検索
備品購入・取引先登録申請内容、承認履歴、登録後の情報マスターデータとの連携、重複申請の防止

ここで押さえておきたいのは、ワークフローシステムだけですべてを管理しようとしない点です。
勤怠は勤怠システム、契約書は電子契約や文書管理システムなど、別の仕組みで持つほうがよい場合もあります。

今回の製品選定で重視したいのは、申請と承認の記録を残し、次の業務へ正しく渡せるかという点です。

最初は添付書類がある申請から始める

すべての申請を一度に電子化すると、申請フォームや承認ルートの設定に時間がかかります。
利用者からの問い合わせも増え、導入担当者の負担が大きくなりがちです。

最初は、対象を1つか2つに絞ると進めやすくなります。
候補として考えやすいのは、次の申請です。

  • 見積書が付く購買申請
  • 請求書が付く支払依頼
  • 領収書が付く経費精算
  • 契約書が付く契約締結の決裁

これらの申請では、紙の受け渡しや添付書類の確認が発生しやすいため、電子化による変化を実感しやすいでしょう。

ただし、会社によって申請件数や困りごとは異なります。
「件数が多い」「承認がよく止まる」「書類を探す時間が長い」のいずれかに当てはまる申請を優先してください。

電子帳簿保存法は書類の受け取り方を分けて考える

請求書や領収書を扱う場合は、電子帳簿保存法との関係も確認します。
ただし、最初から細かな要件をすべて覚える必要はないでしょう。
まずは、書類を電子データで受け取ったのか、紙で受け取ったのかを分けて考えましょう。

メールやWebから受け取った書類

法人税などで書類の保存義務がある事業者は、電子取引データにも対応が必要です。
メールやWebサービスで受け取った請求書・領収書などは、原則として電子データのまま保存します。

ワークフローシステムに添付するだけで保存要件を満たせるとは限りません
訂正や削除への対応、検索方法など、確かめる先はシステムと社内運用の両方です。

紙で受け取った書類はスキャンの期限に注意する

紙で受け取った請求書や領収書は、紙のまま保存できます。
一定の要件を満たしてスキャンデータを保存し、紙に代える方法も選択肢です。

ここで気をつけたいのは、スキャンに期限がある点になります。
書類を受け取ってからスキャンするまでの期間には上限があり、社内の処理サイクルしだいです。
国税庁は、業務サイクルに合わせる方式なら最長で2か月とおおむね7営業日以内としています。

入力期間を誤って過ぎた場合、スキャンデータだけで紙の保存に代えることはできません。
元の紙も残す扱いです。

注意したいのは、承認後に経理担当者がスキャンする運用です。
承認が長く止まると、その間にも入力期限が近づきます。
どの時点でスキャンするのか、承認待ちの書類を誰が確認するのかまで決めておきましょう。

承認ルートの整理は社内規程を作る材料になる

スキャンの期限を業務サイクルに合わせる方式では、社内規程の用意が前提です。
国税庁はこの規程を、企業の方針を定めたものと説明しています。
具体的には、作業責任者や処理基準、判断基準などを含めた業務サイクルにおけるワークフローです。

誰が書類を受け取り、どの順番で処理し、いつまでにスキャンするのか。
ワークフローシステムの導入時にこれらを整理すると、社内規程に盛り込む内容も見つけやすくなります

ただし、承認ルートを設定するだけで規程が完成するわけではありません。
実際の保存手順や責任者まで含めて決める必要があるでしょう。

なお、スキャナ保存では画像の見やすさ、訂正・削除への対応、検索などの要件もあります。
細かな条件は書類や運用によって異なるため、製品を決める前に税理士へ確認すると安心です。
詳しい制度は、電子帳簿保存法対応の記事もご覧ください。

残業申請の承認と実際の労働時間は分けて管理する

残業申請をワークフロー化すると、申請漏れや承認待ちを把握しやすくなります。
ただし、残業申請の時間と実際に働いた時間は、同じとは限らないものです。

厚生労働省のガイドラインでは、使用者が始業・終業時刻を確認し、記録するよう示されています。
原則的な方法は、タイムカードやパソコンの使用時間など、客観的な記録を基礎にした確認です。

そのため、残業申請の履歴だけで管理を終わらせず、勤怠の実績と突き合わせられるようにしましょう。
ワークフローシステムと勤怠システムが連携できると、申請時間と実績のずれも見つけやすいでしょう。

労働時間管理については、労働時間管理の適正化の記事で詳しく説明しています。

ワークフローシステムの製品デモで確認したい8つの質問

機能表に「承認履歴」「電子帳簿保存法対応」と書かれていても、自社が必要とする使い方ができるとは限りません。
製品の説明やデモで確かめたいのは、実際の申請を想定した動きです。

  1. 承認後に残る記録を見せてもらえますか
  2. 申請内容を変更した場合、変更前の記録も残りますか
  3. 承認時に添付されていたファイルをあとから確認できますか
  4. 添付書類はどこに保存されますか
  5. 取引先・日付・金額・申請番号などで検索できますか
  6. 会計・勤怠・電子契約など、現在使っているシステムと連携できますか
  7. 承認履歴と添付書類をまとめて出力できますか
  8. 契約終了時に、必要なデータを取り出せますか

「できますか」と聞くだけでなく、画面で操作を見せてもらうのがポイントです。
標準機能なのか、追加料金が必要なのか、設定や手作業が要るのかも確かめておきましょう。

ワークフローシステム導入の進め方

導入時にまず手を付けるのは、製品選びではなく現在の申請と承認後の業務の整理です。
次の順番で進めると、必要な機能を絞りやすくなります。

STEP
現在の申請を一覧にする

申請名、件数、申請者、承認者、添付書類、承認後の担当部署を書き出します。

STEP
最初に電子化する申請を決める

件数の多さ、承認の遅れ、紙を探す手間を比べ、1つか2つに絞り込むところからです。

STEP
承認後に残す記録と保存先を決める

申請内容、承認履歴、添付書類のうち、何をどこに残すかを明確にします。

STEP
実際の申請を使って製品を試す

自社の申請書や添付書類に近いもので、申請から検索・出力まで実際に操作して確かめます。

STEP
小さく始めて対象を広げる

対象部門や申請を絞って開始し、使いにくい点を直してから段階的に広げてください。

3番目で保存期間や法令上の扱いが分からない場合は、この段階で専門家に確認してください。
また4番目では、承認者だけでなく申請者や経理・人事の担当者にも触ってもらいましょう。
移行期間を除き、同じ申請で紙とシステムを長く併用しない形が安全です。

導入前に専門家へ相談したいケース

ワークフローシステムの販売会社は製品機能には詳しいものの、自社の書類に必要な保存方法まで判断できるとは限りません。
次のような場合は、導入前に税理士、社会保険労務士、弁護士などへ相談してください。

  • 電子データと紙で受け取る請求書が混在している
  • 紙の請求書や領収書をスキャン後に廃棄したい
  • 電子帳簿保存法に対応した保存先や社内規程が分からない
  • 残業申請と勤怠実績を別々に管理している
  • 契約締結の決裁と契約書の保管方法をまとめて見直したい

制度上の扱いは、書類の種類や会社の運用によって変わるものです。
この記事は一般的な情報を整理したものであり、個別の税務・法務判断を行うものではありません。

まとめ|ワークフローシステムは承認後の記録も確認する

ワークフローシステムを選ぶときは、承認の速さだけでなく、承認後に何が残るかを確認しましょう。
見ておきたいのは、次の3点です。

  • 申請内容と承認履歴が残るか
  • 添付書類の保存先が決まっているか
  • 必要な記録をあとから検索・出力できるか

必要な記録は、購買、経費、残業、契約など、申請の種類によって変わるものです。
最初からすべてを電子化せず、困りごとの大きい申請を1つか2つ選び、実際の書類を使って製品を試してください。

JNEXTグループには、税務を担う税理士法人と、労務を担う社会保険労務士の事務所があります。
ワークフローの導入から書類保存・勤怠管理まで、グループでまとめてご相談いただけるのが強みです。

どの申請から始めればよいか分からない段階でも構いません。
設定を始める前に業務の流れを整理しておけば、導入後の手戻りは小さくなるはずです。
まずは無料相談からお気軽にお声がけください。

この記事の根拠にした一次情報

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この記事を書いた人

JNEXTグループ編集部は、税務・会計・労務・DXなどの複雑な情報を、初めての方にも分かりやすく届けることを目的に活動しています。税理士、社会保障監修のもと、正確で実務に役立つ内容を丁寧に解説し、読者の不安を少しでも減らせる記事づくりを心がけています。

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