経理のペーパーレス化を進める方法|電子化のメリットと注意点を解説

経理のペーパーレス化を進める方法|電子化のメリットと注意点を解説
この記事の監修者

荻野岳雄
税理士法人JNEXT 代表社員

税理士/国税局OB。税理士法人JNEXT代表として中小企業の税務・経営支援に従事。DXを軸にした経営改善や税務戦略を得意とし、実務に基づく発信をYouTubeなどでも行っている。

領収書や請求書の山に埋もれ、保管スペースの圧迫や書類探しに時間を取られていませんか。
経理業務のペーパーレス化は、こうした課題を根本から解決する手段のひとつです。

2024年1月から電子帳簿保存法への本格対応が求められるようになり、企業規模を問わず電子化への備えが必要な環境となりました。
電子帳簿保存法への対応が不十分な場合、税務上のリスクにつながる可能性があります。

本記事では、経理のペーパーレス化を検討している経営者・経理担当者に向けて、導入のメリット、具体的な進め方、注意点、専門家への相談が必要なケースまで解説します。

目次

経理のペーパーレス化とは?基本的な仕組みと法令対応を解説

経理のペーパーレス化とはどのような取り組みなのか、また、法令との関係からおさえておくべき基本を整理します。

経理のペーパーレス化の概要

経理のペーパーレス化とは、これまで紙で作成・保管していた帳簿書類や取引関係書類を、電子データで管理する仕組みを構築することです。
対象となる書類は幅広く、主に以下のものが含まれます。

  • 請求書・領収書
  • 契約書・見積書・納品書
  • 各種帳簿

これらをデジタル化し、システム上で保存・検索・承認できる環境を整えます。
スキャン保存にとどまらず、電子帳簿保存法の要件を満たした形で運用することで、法的に認められた正式な書類管理が可能です。
適切に導入すれば、業務効率化・コスト削減・コンプライアンス強化を同時に実現できます。

電子帳簿保存法との関係

電子帳簿保存法は、経理書類を電子データで保存するためのルールを定めた法律です。
2022年1月の改正により、電子取引データの電子保存が義務化され、2024年1月からは本格的な対応が求められています。

改正の主なポイントは以下の通りです。

改正内容概要
電子取引データ保存の義務化メールで受け取った請求書やECサイトからダウンロードした領収書などは、電子データのまま保存しなければならない
タイムスタンプ付与期間の緩和最長2か月以内に延長
検索要件の緩和売上高1,000万円以下の事業者には実質的に免除
スキャナ保存の適正事務処理要件の廃止相互牽制や定期検査といった厳格な社内体制の構築が不要になり、小規模な組織でも取り組みやすくなった

法令対応だけでなく、業務効率化の機会として活用する視点も重要です。

経理をペーパーレス化するメリット

ペーパーレス化によって得られる効果は、コスト面だけではありません。
業務効率や働き方を含む、主な3つのメリットを紹介します。

1. 保管コストの削減につながる

経理のペーパーレス化により、書類保管にかかるコストを削減できます

法人税法では帳簿書類を7年間保存する義務があり、中小企業でもキャビネットや倉庫が過去書類で埋まっているケースは少なくありません。
電子化によって保管スペースが不要になれば、オフィスの賃料や管理コストの削減につながります。

削減が見込める主なコストは以下の通りです。

  • 印刷費・用紙代
  • インク代・プリンター保守費
  • 郵送費
  • 書類保管スペースにかかる賃料・管理費

直接費用だけでなく、書類管理にかかる間接的なコストも含めると、削減効果は広い範囲に及びます。

2. 業務効率化につながる

紙の書類処理には、検索・転記・承認待ちなど、多くの手作業が伴います。
電子化によってこれらの工程が改善され、業務効率化につながります。

改善が見込める主な業務は以下の通りです。

  • 書類の検索
    紙書類を1枚ずつめくる作業がなくなり、システム上で素早く目的の書類にアクセスできる
  • 承認フロー
    担当者から上長・経理部へと紙を回覧する必要がなくなり、オンライン上で承認が完結する
  • 月次決算・税務調査対応
    書類が整理された状態で保存されているため、必要な書類をすぐに取り出せる

また、業務の標準化が進むことで、特定の担当者に業務が集中するリスクも軽減されます
電子化されたデータは関係者がアクセスしやすく、承認履歴もシステムが自動記録するため、担当者の急な休暇や退職にも対応しやすくなります。

3. テレワークや人手不足対策につながる

テレワークが普及するなか、経理部門だけは出社が必要という企業が多く見られました。
その主な理由が、紙の書類処理と押印業務です。

ペーパーレス化を実現すれば、経理担当者も自宅やサテライトオフィスから業務を行えます
クラウド会計システムと電子承認フローを組み合わせることで、以下の業務がオンラインで完結します。

  • 請求書の受領・確認
  • 上長・経理部への承認依頼
  • 支払い処理

柔軟な働き方は、人材確保の面でも有効です。
フルリモートやハイブリッド勤務を提供できれば、地方在住者や子育て中の人材にもアプローチしやすくなります。
人手不足に悩む中小企業こそ、ペーパーレス化を働き方改革の一環として活用する価値があるといえます。

経理のペーパーレス化の進め方

ペーパーレス化を成功させるには、いきなりシステムを導入するのではなく、段階を踏んで進めることが重要です。
4つのステップで解説します。

1. 現状の業務フローと書類を棚卸しする

ペーパーレス化の第一歩は、現状把握です。
自社の経理業務で発生する書類とその流れを可視化することから始めましょう。

① 扱う書類の洗い出し

請求書・領収書・契約書・見積書・納品書など、自社で発生する書類の種類を一覧化します。

② 発生件数の把握

月間・年間でどれだけの書類を扱っているか数量を確認します。
件数の多い書類から優先的に電子化すると、効率よく進められます。

③ 承認フローの整理

誰が起案し、誰が承認し、どこで保管されるのか、書類が辿る経路を図式化します。
ボトルネックや無駄な工程が見えてきます。

④ 電子化する書類の優先順位付け

すべての書類を一度に電子化しようとすると、現場の負担が大きくなります。
処理件数が多い書類や、保管スペースを多く占めている書類から着手するのが現実的です。

棚卸しには2週間〜1か月程度かけ、営業部門・購買部門など経理以外の部署へのヒアリングも行いましょう。

2. 電子帳簿保存法に対応した運用方法を決める

電子化を進める際、最も注意すべきは電子帳簿保存法の要件です。
保存方法を誤ると、税務調査で否認されるリスクがあります。
法令の3区分を理解した上で、自社の運用方法を決めましょう。

電子帳簿保存法の3区分

区分内容
電子帳簿等保存会計ソフトで作成した帳簿をデータのまま保存する方法
スキャナ保存紙で受け取った書類をスキャンして電子保存する方法
電子取引データ保存メールやウェブサイトで受け取った電子データを保存する方法(2024年1月より完全義務化)

保存ルールの整備

電子取引データ保存では、以下の要件を満たす必要があります。

  • 真実性の確保:タイムスタンプの付与、または訂正・削除の履歴が残るシステムでの保存
  • 可視性の確保:取引年月日・取引金額・取引先名で検索できる状態での保存

メールに添付された請求書を通常のフォルダに保存しているだけでは、検索要件を満たしていません。
ファイル名を規則的に付けるか、専用システムを利用する必要があります。

法令要件は定期的に更新されるため、国税庁のウェブサイトや専門家の情報を継続的に確認する姿勢が重要です。

3. システム・ツールを選定する

経理のペーパーレス化を実現するシステムは数多く存在します。
機能の豊富さに惹かれて過剰なシステムを導入してしまうのはよくある失敗です。
以下のチェック項目を軸に、自社に合ったものを選びましょう。

チェック項目確認内容
法令対応状況JIIMAの認証を取得しているか
会計ソフトとの連携現在使用している会計ソフトとデータ連携できるか(API連携・CSV出力の有無)
操作性現場担当者が実際に使いこなせるか(無料トライアルで確認)
費用初期費用・月額料金・ユーザー数による課金・追加オプション費用の総額
サポート体制導入時・運用開始後・法改正時のアップデート対応

まず必要最小限の機能から始め、運用が安定してから拡張する段階的なアプローチが現実的です。

4. 社内へ周知し運用を定着させる

ペーパーレス化の最大の障壁は、技術ではなく人の意識です。
長年紙の業務に慣れた従業員にとって、システム化は不安や抵抗感を生みやすいものです。
定着させるための進め方を4つ紹介します。

① 社内説明

なぜペーパーレス化を進めるのか、会社の方針として経営層から明確に打ち出しましょう。
コスト削減や業務効率化といった経営メリットだけでなく、従業員の働きやすさ向上につながることも伝えます。

② 研修

全社員向けには電子帳簿保存法の基礎知識と会社方針を説明する全体研修を実施します。
実際にシステムを操作する部署には、ハンズオン形式の実務研修を行いましょう。
一度の研修で完璧を求めず、使いながら慣れていく環境づくりが重要です。

③ パイロット運用

特定の部署や書類種類に限定して先行導入し、問題点を洗い出してから全社展開します。
混乱を最小限に抑えられ、現場の声を反映する機会にもなります。

④ マニュアル整備

操作手順をまとめたマニュアルを用意し、気軽に質問できる相談窓口を設けましょう。
現場からの改善提案を積極的に取り入れることで、システムの実用性と定着率が向上します。

経理のペーパーレス化で注意したいポイント

電子化を進める上で、見落としやすい注意点があります。
法令要件を正しく理解した上で進めましょう。

紙の領収書・請求書をスキャナ保存する際の注意点

紙で受け取った書類をスキャナ保存する際は、電子帳簿保存法のスキャナ保存要件を遵守する必要があります
違反すると税務調査で経費として認められないリスクがあるため、正確な理解が求められます。

スキャナ保存の主な要件

要件内容
解像度・階調200dpi以上・赤・緑・青それぞれ256階調以上のカラー画像で保存(白黒スキャンは原則不可)
タイムスタンプまたは履歴保存書類受領から2か月と概ね7営業日以内にタイムスタンプを付与するか、訂正・削除履歴が残るシステムで保存
大きさ情報の保存A4を超える書類は、実際の大きさがわかる情報を別途保存

スキャナ保存の要件を満たした場合、紙の原本を保存し続ける必要はありません。
ただし、重要書類については一定期間原本を保管する社内ルールを設けている企業も多くあります。

感熱紙のレシートは時間が経つと印字が消えるため、早めにスキャンする運用フローを構築しましょう。
スマートフォンでの撮影保存も認められていますが、ピンボケや光の反射で文字が判読できない画像は要件を満たしません
撮影後の確認プロセスを必ず設けてください。

過去の紙書類を無理に電子化しない

ペーパーレス化を進める際、過去の膨大な書類をどう扱うかは悩ましい問題です。
結論から言えば、法的には過去の書類を遡って電子化する義務はありません

電子帳簿保存法は、制度の適用開始時点から将来に向けて適用されるものです。
過去分の書類は、従来どおり紙のまま保存を継続しても問題ありません。

実務的な観点から電子化を検討する価値があるのは、以下のような書類です。

  • 参照頻度が高い書類(継続的な取引先との基本契約書、進行中プロジェクトの過去書類など)
  • 保管スペースを大きく占めており、コスト削減効果が見込める書類

一方、保存期間が残り1年以内の書類は、紙のまま保存期間満了を待つほうが合理的です。

すべての過去書類を電子化しようとして途中で挫折するケースは少なくありません。
優先順位を明確にし、費用対効果の高いものから段階的に進めることが成功につながります。

経理のペーパーレス化で専門家に相談した方がよいケース

ペーパーレス化は自社だけで進められる部分も多い一方、専門家のサポートが欠かせない場面もあります。
誤った対応は税務リスクや業務の混乱を招くため、以下のような状況では早めの相談をご検討ください。

法令要件を正しく理解して税務リスクを避けたい

電子帳簿保存法は要件が細かく、自社の業務への適用に迷うケースが多くあります。
以下のような状況では、専門家の判断が重要です。

  • 複数の取引先からさまざまな形式で書類を受け取っており、保存方法の整理が難しい
  • 電子と紙が混在する移行期間の管理方法が不明確
  • 過去に税務調査で指摘を受けた経験があり、リスクを最小化したい
  • 建設業・医療機関・不動産業など、業種特有の書類や複雑な商流がある

税理士や公認会計士は、電子帳簿保存法の最新動向を把握した上で、税務調査のリスクを考慮した実務的なアドバイスを提供できます
法令違反が後から発覚すると修正コストが膨大になるため、導入前の段階で専門家のチェックを受けることが安心への近道です。

自社に最適なシステム選定や業務フローの見直しが必要な場合

システム選定は製品の比較にとどまらず、自社の業務フロー全体の最適化を視野に入れるべきです。
現状業務をそのままシステムに載せ替えようとすると、かえって非効率になるケースがあります。

業務改善の専門家は、ペーパーレス化を機に業務プロセス全体を見直し、無駄な承認ステップの削減や部署間の連携強化など、抜本的な改革を提案できます
また、会計システム・経費精算システム・電子契約システム・ワークフローシステムなど、複数ツールの連携設計にはITコンサルタントの支援が有効です。

導入後の定着支援も重要なポイントです。システムを導入しただけで運用が軌道に乗るケースは少なく、初期のトラブル対応や継続的な改善活動が成功を左右します。

まとめ:経理のペーパーレス化は段階的に進めることが成功のポイント

経理のペーパーレス化は、書類保管コストの削減・業務効率化・テレワーク対応など、多くのメリットをもたらす取り組みです。
2024年1月からは電子帳簿保存法の本格施行により、電子取引データの電子保存が完全義務化されました。
対応を後回しにすると税務リスクにつながるため、早めの対策が求められます。

進め方のポイントを整理すると、以下の通りです。

  • 現状の業務フローと書類を棚卸しし、優先順位を明確にする
  • 電子帳簿保存法の要件を理解し、自社の保存ルールを整備する
  • 自社の規模と業務に合ったシステムを選定し、段階的に導入する
  • 社内周知・研修・パイロット運用を通じて、現場への定着を図る

法令要件の解釈やシステム選定、業務フローの見直しに不安を感じる場合は、専門家への相談が確実です。

JNEXTグループでは、電子帳簿保存法への対応からシステム選定・業務フロー設計・導入後のサポートまで、経理のペーパーレス化を一貫して支援しています
無料相談を受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

JNEXTグループ編集部は、税務・会計・労務・DXなどの複雑な情報を、初めての方にも分かりやすく届けることを目的に活動しています。税理士、社会保障監修のもと、正確で実務に役立つ内容を丁寧に解説し、読者の不安を少しでも減らせる記事づくりを心がけています。

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